脳性麻痺に対する股関節周囲筋選択的解離術の成績

「目的」脳性麻痺の股関節周囲筋選択的解離術は股関節脱臼の予防, 緊張抑制手技として欠かせないものとなっている. 今回, その成績について報告する. 「対象」本手術を施行した43例84股で, 男21例, 女22例, 手術時年齢は平均9歳11ヵ月, 経過観察期間は平均2.8年であった. 術式は松尾の方法に準じ, ハムストリングを中枢部で延長, 膝屈曲拘縮が強い場合は遠位部での延長も併用した. 屈筋群は大腰筋, 大腿直筋延長, 内転筋は薄筋の切離, 大内転筋の遠位付着部切離を行い, 長内転筋は原則として温存または, 可及的遠位での筋内腱切離にとどめた. 合併手術として5股に大腿骨減捻内反骨切り術(以...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 34; no. 11; p. 776
Main Authors 仲宗根聡, 山口健, 仲田行克, 金谷文則, 古堅隆司, 工藤啓久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1997
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ISSN0034-351X

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Summary:「目的」脳性麻痺の股関節周囲筋選択的解離術は股関節脱臼の予防, 緊張抑制手技として欠かせないものとなっている. 今回, その成績について報告する. 「対象」本手術を施行した43例84股で, 男21例, 女22例, 手術時年齢は平均9歳11ヵ月, 経過観察期間は平均2.8年であった. 術式は松尾の方法に準じ, ハムストリングを中枢部で延長, 膝屈曲拘縮が強い場合は遠位部での延長も併用した. 屈筋群は大腰筋, 大腿直筋延長, 内転筋は薄筋の切離, 大内転筋の遠位付着部切離を行い, 長内転筋は原則として温存または, 可及的遠位での筋内腱切離にとどめた. 合併手術として5股に大腿骨減捻内反骨切り術(以下DVO)と骨盤骨切り術, 1股にDVO, 6股に観血的整復術を併用した. 成績は手術前後の運動レベルを松尾らの方法で評価した. また, 股関節(亜)脱臼のX線計測にはmigration percentage(以下MP)を用いた. 「結果」運動レベルでは改善が19例, 不変24例, 悪化は0であった. 重度障害児に対するアンケート調査では, 全身緊張の軽減, 座位保持の安定化, 介護量の軽減, 流涎や誤嚥の減少など同一運動レベル内であっても何らかの改善がみられる例が多かった. X線上MP33%以上の脱臼, 亜脱臼がみられた34股で術後MP33%未満に改善したものは41%にすぎず, 脱臼, 亜脱臼例に対する股関節周囲筋解離術の限界が示された.
ISSN:0034-351X