急性上気道閉塞に伴って肺水腫を発症した3症例

急性上気道閉塞に伴って肺水腫を来たした3症例を経験したので報告する. 症例1:24歳男性. 上顎骨骨折に対する観血的整復術が予定されたが, 既往歴および術前検査に問題は認められなかった. 全身麻酔下に上顎骨観血的整復術を施行し, 麻酔からの覚醒を確認した後に気管内チューブを抜管した. 抜管直後から高度の上気道閉塞症状が出現し, マスクによる補助呼吸が困難であったために再挿管を行ったところ, 湿性ラ音の聴取とピンク色の泡沫状の分泌物が大量に吸引でき, 急性肺水腫と診断した. ICUにて呼吸・循環管理を行い, 2日目に病棟へ無事帰室した. 症例2:41歳, 女性. 34歳時に顔面熱傷(III度)....

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Published in蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 226
Main Authors 諏訪一郎, 泉貴文, 口分田理, 平松謙二, 坂口雅彦, 古賀義久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1999
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Summary:急性上気道閉塞に伴って肺水腫を来たした3症例を経験したので報告する. 症例1:24歳男性. 上顎骨骨折に対する観血的整復術が予定されたが, 既往歴および術前検査に問題は認められなかった. 全身麻酔下に上顎骨観血的整復術を施行し, 麻酔からの覚醒を確認した後に気管内チューブを抜管した. 抜管直後から高度の上気道閉塞症状が出現し, マスクによる補助呼吸が困難であったために再挿管を行ったところ, 湿性ラ音の聴取とピンク色の泡沫状の分泌物が大量に吸引でき, 急性肺水腫と診断した. ICUにて呼吸・循環管理を行い, 2日目に病棟へ無事帰室した. 症例2:41歳, 女性. 34歳時に顔面熱傷(III度). その後全身麻酔下に修正術を2回受けているが, 特に問題はなかった. 顔面熱傷後の瘢痕修正術施行後, 全身麻酔からの覚醒を確認した後に気管内チューブを抜管した. 抜管後, 次第に上気道閉塞症状が増悪して湿性ラ音を聴取, 再挿管したところピンク色の泡沫状の分泌物が多量に吸引できたためにICUにて呼吸管理し, 3日目に帰室した. 症例3:19歳, 男性. 顔面および頚部の熱傷後瘢痕修正術が全身麻酔下に予定された. 瘢痕拘縮のために開口2横指, 頚部後屈は著しく制限されていたが, 挿管可能と判断してサイアミラール300mg, ベクロニウム8mgによる急速導入が試みられた. 就眠後, マスクによる換気が次第に困難となり, 挿管を試みるも不可能であったため麻酔科医師が呼ばれた. 心電図は洞性頻脈, 口唇および四肢にチアノーゼが認められたが, マスクによる補助呼吸は困難であり, 高度の上気道閉塞症状と湿性ラ音を聴取したためにICUへ搬送した. 気管切開は家族の強い反対にて見合わせ, マスクによる酸素投与を行ない, 約30分後に麻酔および筋弛緩薬から回復した. 湿性ラ音と胸部X線にて肺水腫を認めたため利尿薬とマスクによる酸素投与を行い, 全身状態の改善を待って病棟へ帰室した. 考察:これらの3症例の共通点として年齢は比較的若く, 急性上気道の閉塞によって発生した過大な胸腔内陰圧, 抜管前後の不安定な循環動態および低酸素血症などの関与によって肺水腫が発生したと考えられる. 結語:周術期に生じた急性上気道閉塞に伴った肺水腫症例を3例経験した. 予後は比較的良好ではあったが, 抜管時に生じる喉頭痙攣などへの厳重な配慮が必要である.
ISSN:0288-4348