骨格性下顎前突者における顎運動と筋活動

【緒言】骨格性下顎前突者の咀嚼運動や筋活動は不規則であるとされている. しかし, 咀嚼時の開口筋と閉口筋の協調やそれらと顎運動との対応は十分に検討されていない. そこで, 顎運動のパターンと咀嚼筋の活動を調べた. 【対象と方法】対象は, 骨格性下顎前突症の男性7名(P群, 平均年齢25歳4ヵ月)と, Skeletal class I正常咬合の男性7名(N群, 平均年齢25歳6ヵ月)である. ナソヘキサグラフ(GC社, JM-1000)を用いて, チューインガム咀嚼時の両側の咬筋, 側頭筋, 顎二腹筋の筋電図と下顎運動を記録した. 解析ソフト(キッセイ社, BIMUTAS-E)を用いて, 顎運動...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 8; no. 2; p. 122
Main Authors 永田順子, 池田浩一, 数藤正人, 小椋幹記, 黒江和斗, 伊藤学而
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 15.08.1998
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ISSN0916-7048

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Summary:【緒言】骨格性下顎前突者の咀嚼運動や筋活動は不規則であるとされている. しかし, 咀嚼時の開口筋と閉口筋の協調やそれらと顎運動との対応は十分に検討されていない. そこで, 顎運動のパターンと咀嚼筋の活動を調べた. 【対象と方法】対象は, 骨格性下顎前突症の男性7名(P群, 平均年齢25歳4ヵ月)と, Skeletal class I正常咬合の男性7名(N群, 平均年齢25歳6ヵ月)である. ナソヘキサグラフ(GC社, JM-1000)を用いて, チューインガム咀嚼時の両側の咬筋, 側頭筋, 顎二腹筋の筋電図と下顎運動を記録した. 解析ソフト(キッセイ社, BIMUTAS-E)を用いて, 顎運動(開口相, 閉口相, 咬合相の時間と変動係数, 切歯路), 筋電図(burstのduration, cycle length, 活動開始時間, 積分値), 顎運動とburstの時間のずれを解析した. 【結果】1)顎運動:開口相と咬合相の時間の変動はP群で大きく咬合相の時間が短かい. 前頭面での切歯路はP群では垂直型で不規則だが, N群では楕円型で規則的である. 2)筋活動:burst単位での積分値には群間で差がないが, P群では咬合相における咬筋と側頭筋の積分値が小さい. 咬筋と顎二腹筋の活動開始の時間差が小さい. 3)顎運動と筋活動の時間差:P群では側頭筋と咬筋の活動開始と同時に閉口相が開始するが, N群では側頭筋の活動開始とともに切歯が内側方へ移動した後, 咬筋の活動とともに閉口相が開始する. 【考察と結論】咀嚼時の筋活動と顎運動のリズムは不規則で, 切歯路も不規則であり, これまでの報告と一致していた. また, 咀嚼時の開口筋と閉口筋の協調が悪く, 側方運動の小さいchopping様の咀嚼をしていることから, P群では咀嚼筋および咀嚼機能の発達が劣っていることが示唆された.
ISSN:0916-7048