多骨性線維性骨異形成症に対する頭蓋骨骨削除術の麻酔経験

今回, 多骨性で巨大な頭蓋骨の線維性骨異形成症の麻酔を経験したので報告する. [症例]39歳, 男性, 8歳頃に右眼視力低下出現, 骨による視神経圧迫と診断された. 10歳頃から頭蓋骨巨大化のため歩行困難出現, 12歳に易骨折性となり以降ベット上の生活となる. 20歳より顔面骨の変形が著明となり, 今回, 視力改善手術目的にて当院形成外科に入院となった既往歴, 家族歴は特記すべき事無し. 体重76.2kg, 約3-4頭身, 特に前頭骨, 下顎骨が肥大化し典型的な容貌をしていた. 血液, 生化学, 内分泌検査に異常を認めなかった. 胸部X線にて心肥大, 胸郭の変形を認めたが, 心電図, 呼吸機能...

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Published in蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 267
Main Authors 口分田理, 泉貴文, 平松謙二, 古賀義久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1999
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Summary:今回, 多骨性で巨大な頭蓋骨の線維性骨異形成症の麻酔を経験したので報告する. [症例]39歳, 男性, 8歳頃に右眼視力低下出現, 骨による視神経圧迫と診断された. 10歳頃から頭蓋骨巨大化のため歩行困難出現, 12歳に易骨折性となり以降ベット上の生活となる. 20歳より顔面骨の変形が著明となり, 今回, 視力改善手術目的にて当院形成外科に入院となった既往歴, 家族歴は特記すべき事無し. 体重76.2kg, 約3-4頭身, 特に前頭骨, 下顎骨が肥大化し典型的な容貌をしていた. 血液, 生化学, 内分泌検査に異常を認めなかった. 胸部X線にて心肥大, 胸郭の変形を認めたが, 心電図, 呼吸機能は正常であった. 今回, 視神経減圧目的の頭蓋形成術に先立って前頭骨の骨削術が予定された. [麻酔経過]前投薬は投与せず. 意識下に喉頭展開を試みたが, 従来の喉頭鏡のブレードでは喉頭蓋谷に到達できず喉頭展開は不可能であった. また, マスク換気も困難であると判断し, 意識下気管支ファイバー挿管を選択した. 喉頭蓋までの距離が長いため, 声帯を確認するために約20分を要し, ファイバーをガイド下に挿管した. 導入はサイアミラール, 維持はGOS+NLAで行った. 頭皮剥離し, 骨削除術開始後, 1時間に約3000g出血し, 収縮期血圧70mmHgとなった. この時点で前頭骨の骨削除は約5cm行っていたが, 術者は, 出血のコントロールが困難であると判断して手術を中止した. 止血を確認後手術終了した. 手術時間6時間25分, 出血量8076g, 輸血量5740ml, 輸液量7950mlであった. 意識および筋弛緩の十分な回復を確認後, 抜管した. [考察]線維性骨異型性症は骨組織における線維性組織の過誤増殖を主体とする原因不明の骨発生異常とされ, 単骨型と多骨型に分類されている. 多骨型において麻酔管理上問題となるのは, 顔面骨の強度の変形による挿管困難である. 当症例も顔面の変形が強度で下額骨が著明に肥大化しているため, 意識下気管支ファイバー挿管を行った. また, 広範囲に頭蓋顔面骨の骨削除を行う場合, 骨は脆く易出血性であるため大量出血に対する十分な準備が必要である. [結語]多骨型線維性骨異型性症の頭蓋骨手術の麻酔管理においては, 気道確保および術中の大量出血に留意する必要がある.
ISSN:0288-4348