MRI拡散強調画像の基礎的研究

水の拡散測定は, 組織の質的および動的解析に有用である. NMRによる拡散の研究は古く1960年代より行われてきたが, 実際にin vivoでの画像化が可能となったのは近年である. 一般に生体組織での水の動きは, 血流や髄液流のようなマクロの流れから灌流のような毛細血管の準ミクロな流れ, 拡散という100μm/sec程度のランダムなミクロの動きまで多岐にわたっている. MRIでは, spin echo法のT2強調画像において, 180度pulseの前後にmotion probing gradient(MPG) pulseを付加することで拡散という100μm/sec程度のランダムな動きを画像化す...

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Published in歯科放射線 Vol. 36; no. 4; p. 248
Main Authors 瀬々良介, 香川豊宏, 堀尾慎一郎, 田代陽美子, 小川和久, 和田忠子, 森進一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.12.1996
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ISSN0389-9705

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Summary:水の拡散測定は, 組織の質的および動的解析に有用である. NMRによる拡散の研究は古く1960年代より行われてきたが, 実際にin vivoでの画像化が可能となったのは近年である. 一般に生体組織での水の動きは, 血流や髄液流のようなマクロの流れから灌流のような毛細血管の準ミクロな流れ, 拡散という100μm/sec程度のランダムなミクロの動きまで多岐にわたっている. MRIでは, spin echo法のT2強調画像において, 180度pulseの前後にmotion probing gradient(MPG) pulseを付加することで拡散という100μm/sec程度のランダムな動きを画像化することが可能です. この方法を用いて撮像した画像を拡散強調画像(Diffusion weighted image)と呼んでいる. 今回われわれは, このシーケンスを使った拡散強調画像の信頼性の確認と臨床応用への基礎実験を行ったので報告した. 水とアセトンを使用した実験では, MPG pulseを付加していないT2強調画像では識別することが困難であったが, MPG pulseを段階的に強く付加していくと容易に識別することが可能であった. また, 拡散係数を計測すると水の拡散係数は, 2.088~2.225×10^-3 平方ミリメートル/s, アセトンの拡散係数は, 4.225~4.437×10^-3 平方ミリメートル/sとなり, 従来の報告とほぼ同等であった. 次に, 牛乳を水で段階的に希釈してどれくらい識別が可能か, またT1, T2強調画像とどのような違いがあるか検討した. T1, T2強調画像では識別が困難であったわずかな濃度変化の差を的確に画像に反映していた. 拡散強調画像は, 従来のMR画像の信号とは異なったプロトン拡散運動の違いを画像化することができ, 生体で重要な役割をしている水分子の組織内の拡散という新しい情報を与えてくれる. このことより種々の病態解析の有用な一手段になると思われた.
ISSN:0389-9705