過去10年間の心停止症例の検討

信州大学医学部中央手術部における10年間の術中心停止症例について検討した. 心停止が生じた割合は, 心臓胸部大血管手術で650件中14件, そのほかの一般手術で26, 777件中27件, 合計27, 427件中41件であった. 年齢別では心停止の生じた頻度に, 有意な差を認めなかった. 心臓・胸部大血管手術を除いた症例では緊急症例に心停止が多かった. また, ASAの1でも4件, 2でも6件とリスクの高い群に多いという傾向はなかった. 全心停止症例のうち7割が蘇生しえた. 心停止の原因は, 麻酔に関連したもの・手術操作に関連したもの・患者の状態に関連したものがほぼ3分の1ずつであった. 手術操...

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Published in蘇生 Vol. 9; pp. 65 - 66
Main Authors 榊純太郎, 安藤尚美, 笹尾潤一, 田中幸一, 小田切徹太郎, 清野誠一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1991
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Summary:信州大学医学部中央手術部における10年間の術中心停止症例について検討した. 心停止が生じた割合は, 心臓胸部大血管手術で650件中14件, そのほかの一般手術で26, 777件中27件, 合計27, 427件中41件であった. 年齢別では心停止の生じた頻度に, 有意な差を認めなかった. 心臓・胸部大血管手術を除いた症例では緊急症例に心停止が多かった. また, ASAの1でも4件, 2でも6件とリスクの高い群に多いという傾向はなかった. 全心停止症例のうち7割が蘇生しえた. 心停止の原因は, 麻酔に関連したもの・手術操作に関連したもの・患者の状態に関連したものがほぼ3分の1ずつであった. 手術操作に関連して心停止が生じた場合には, 術中死が多かった. 麻酔に関連した心停止9例の内訳は, 5例が気道系のトラブル, 3例が薬物の過剰投与, 1例が偶発的な低体温であった. これらは注意深い術中観察, 薬物を投与する時の慎重な配慮や, 呼吸音の持続モニター, パルスオキシメーター, 呼気CO_2 モニターなどを使用することにより, 予防しえた可能性がある. 患者の状態を原因とする心停止9例の内訳は, 3例が重篤な心機能障害, 2例が新生児横隔膜ヘルニア, 4例が熱傷・イレウスなどだった. この中には2例の術中心筋梗塞による心停止もあることから, 術前の正しい心機能評価や予防的治療を講ずることによって心停止を防げた可能性もある. また, 循環血液量の不足に対しても術前からの十分な輸液・輸血を行うことにより, 術中心停止をより少なくできたかも知れない. 正確な術前状態の把握と慎重な麻酔管理の必要性を痛感させられた.
ISSN:0288-4348