発症後9時間で脳波が平坦になった劇症Reye症候群の1例

Reye症候群は主に15歳以下に見られる全身の臓器, 特に肝の脂肪変性とミトコンドリアの変化が特徴の急性脳症である. 近年, 小児へのサリチル酸投与の減少によりその発生頻度は激減している. 今回, 我々は発症後わずか9時間程で, 脳波がほぼ平坦になった劇症の臨床的Reye症候群の1例を経験したので報告する. 〔症例〕7歳, 男児. 既往歴に新生児仮死, 髄膜炎があったが, 発達遅延もなく, 日常生活に問題はなかった. 入院2週間前より, 鼻水があり近医にて抗生剤, 鎮咳薬, 抗ヒスタミン薬を処方されていた. 入院3日前より市販のアセトアミノフェンを服用. 入院前日より38℃台の発熱が見られたが...

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Published in蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 245
Main Authors 松下邦洋, 高須宏江, 梶田裕加, 寺澤篤, 高津るみ子, 田口弥人, 山田富雄, 杉本憲治, 林和敏, 安田邦光, 石川清
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1999
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Summary:Reye症候群は主に15歳以下に見られる全身の臓器, 特に肝の脂肪変性とミトコンドリアの変化が特徴の急性脳症である. 近年, 小児へのサリチル酸投与の減少によりその発生頻度は激減している. 今回, 我々は発症後わずか9時間程で, 脳波がほぼ平坦になった劇症の臨床的Reye症候群の1例を経験したので報告する. 〔症例〕7歳, 男児. 既往歴に新生児仮死, 髄膜炎があったが, 発達遅延もなく, 日常生活に問題はなかった. 入院2週間前より, 鼻水があり近医にて抗生剤, 鎮咳薬, 抗ヒスタミン薬を処方されていた. 入院3日前より市販のアセトアミノフェンを服用. 入院前日より38℃台の発熱が見られたが元気であった. 入院当日朝9時頃より嘔吐, 右季肋部痛が出現し, 言動の異常も見られたので同日当院小児科外来を受診した. 10時30分頃, 待合室にて診察を待っている間に, 便失禁とともに意識障害が出現したため, 11時ICUに収容した. 〔ICU経過〕入室時, 意識状態は昏迷. 右への共同偏視が見られたが, 対光反射, 眼頭反射を両側ともに認めた. 四肢の麻痺はなかった. 代謝性アシドーシスと白血球, クレアチニンの軽度上昇のほか血液データ上異常はなかった. 頭部CTでは出血, 占拠性病変, 脳室の狭小化, 脳溝の不鮮明化等は認めなかった. 髄液所見では細胞数, 蛋白ともに正常であった. 14時頃, 呼吸パターンが悪化したため気管内挿管後, 人工呼吸を開始した. 13時の脳波では全体的に徐波化を認めたが, 18時にはほぼ平坦になった. この頃よりトランスアミナーゼが軽度増加し, 第二病日にはGOT4401U, GPT2603IUとなった. 急性非感染性脳症, 髄液中細胞数正常, トランスアミナーゼ上昇, 他の原因がないことよりCDCの診断基準により臨床的Reye症候群と診断した. マンニトール, フェノバルビタール, 過換気にて脳圧の低下を図ったが, 第三病日の頭部CTで著明な脳浮腫と脳軟化を認め, 第五病日, 治療の甲斐なく死亡した. 〔考察〕小児に対するサリチル酸の使用の減少により, Reye症候群の発生頻度は激減したといわれている. しかし, この症例のように意識障害がトランスアミナーゼの上昇に先行し, 急激に進行するケースがあるので, 早期に診断し, 治療を開始するためには, たとえトランスアミナーゼの上昇がなくとも小児急性脳症では常にReye症候群を念頭に置き, 早期に対応する必要がある.
ISSN:0288-4348