輸血により産生されたと考えられる抗f抗体の1症例
今回我々は, 頻回の輸血により産生されたと考えられる抗f抗体の1症例を経験したので報告する. 【症例】77歳男性, 平成7年6月に悪性リンパ腫と診断, 入退院を繰り返す. 平成9年5月以前の輸血歴なし. 平成9年6月にRC-MAP4u, 8月に6u輸血時に不規則抗体検査は陰性であった. 平成10年4月3日に腸管出血と貧血進行のため, RC-MAP10uの交差適合試験の依頼があり, 輸血前不規則抗体検査を行ったところ陽性を示し, 精査の結果抗f抗体を検出した. 患者は4月8日にRC-MAP2u, 4月17日に2u輸血されたが, 4月21日多臓器不全のため死亡した. 【結果】患者の血液型はB型,...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 252 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1999
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 今回我々は, 頻回の輸血により産生されたと考えられる抗f抗体の1症例を経験したので報告する. 【症例】77歳男性, 平成7年6月に悪性リンパ腫と診断, 入退院を繰り返す. 平成9年5月以前の輸血歴なし. 平成9年6月にRC-MAP4u, 8月に6u輸血時に不規則抗体検査は陰性であった. 平成10年4月3日に腸管出血と貧血進行のため, RC-MAP10uの交差適合試験の依頼があり, 輸血前不規則抗体検査を行ったところ陽性を示し, 精査の結果抗f抗体を検出した. 患者は4月8日にRC-MAP2u, 4月17日に2u輸血されたが, 4月21日多臓器不全のため死亡した. 【結果】患者の血液型はB型, CCDee, 直接クームス試験は陰性. 不規則抗体同定の際, パネルセルにてf血球にのみAl-Co法で2+を示した. 吸着解離試験にてccD(d)ee血球で吸着後, 血清は抗f抗体が消失し, 解離液より抗f抗体を認めた. 抗f抗体価はccdee血球で16倍であった. 【考察】検出された抗f抗体はこれらの輸血により産生されたものと考えられた. また2ME処理血清は, 未処理血清と同様の反応を示し, IgG性のものと考えられた. 抗f抗体はD, Cc, Eeに次ぐ第4のRh抗原系に対する抗体か, あるいは抗cis-ce抗体と考えられ, 我々もcis-ce以外と反応するものがあるかどうかを試みるため, 患者血清を無作為に103例のB型もしくはO型の血球と反応させたが, ceハプロタイプをもつと考えられる血球とのみしか反応しなかった. |
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ISSN: | 0546-1448 |