下半身広範熱傷児に対するリハビリテーションの経験

下半身に約43%の熱傷を負った6歳男児のリハビリテーションを経験したので報告した. 「現病歴」平成8年3月22日, 沸かし過ぎの風呂の蓋から浴槽に落ち受傷. 当院小児外科に救急入院. 臍から両下肢のII度熱傷によるショックに対し全身管理が行われ, 3回の植皮手術が行われた. 5月30日にリハ依頼があった. 「初診時評価」受傷以来ベッド上臥床, 股・膝関節伸展位, 足関節底屈位で過ごしていた. 左下肢は少し動かすだけで非常に痛がるが, 右の股・膝関節は各30°屈曲まで他動運動ができた. 「リハ経過」疼痛の比較的少ない右下肢荷重を手がかりに斜面台での立位訓練を行い, 更にリクライニング車イスを利用...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 34; no. 12; p. 934
Main Authors 吉永勝訓, 天田裕子, 高堀康裕, 戸嶋由美子, 土田隆政
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1997
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Summary:下半身に約43%の熱傷を負った6歳男児のリハビリテーションを経験したので報告した. 「現病歴」平成8年3月22日, 沸かし過ぎの風呂の蓋から浴槽に落ち受傷. 当院小児外科に救急入院. 臍から両下肢のII度熱傷によるショックに対し全身管理が行われ, 3回の植皮手術が行われた. 5月30日にリハ依頼があった. 「初診時評価」受傷以来ベッド上臥床, 股・膝関節伸展位, 足関節底屈位で過ごしていた. 左下肢は少し動かすだけで非常に痛がるが, 右の股・膝関節は各30°屈曲まで他動運動ができた. 「リハ経過」疼痛の比較的少ない右下肢荷重を手がかりに斜面台での立位訓練を行い, 更にリクライニング車イスを利用して座位訓練, 下肢関節可動域訓練を行った. その過程で疼痛を強く訴えたため, 患児の興味ある遊びを訓練に取り入れる工夫を要した. 6月中旬に平行棒内歩行が, 7月中旬にはイス座位が可能となる. 7月27日に独歩退院し外来リハに移行した. 8月中旬には鉄棒や自転車も可能になったが, しゃがみ姿勢の獲得には時間を要した. 10月から普通校へ通学を開始. 平成9年8月現在, 両下肢筋力可動域ともほぼ正常で通常の生活や運動が行えている. 「考察」熱傷は広範囲であったが足底を除く下肢に限局し, また小児で拘縮が改善し易かったことから順調に社会生活適応まで経過した. 訓練内容に遊びを取り入れることが非常に効果的であった.
ISSN:0034-351X