換気条件による吸入酸素濃度の変化について

一般に使用されている酸素吸入器具は, 実際にどの程度の酸素投与がなされているか不明確であり, 呼吸状態により吸入酸素濃度が影響される. 今回われわれは, 呼吸インピーダンス-プレチスモグラフ法によるレスピトレースを用い, 経気道的には何ら操作を加えることなく, 換気量と吸気速度を求め, それらの吸入酸素濃度に与える影響について検討した. 対象器具としては, 鼻カニューラ, ポリマスク, オキシゲンマスクおよび, ベンチマスクを用い, 酸素濃度はガスモニターで測定し, ガスサンプリングは被験者の咽頭部で行った. 換気量, 吸気速度が小さい場合には, ある程度一定した吸入酸素濃度を示すが, それら...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in蘇生 Vol. 4; p. 84
Main Authors 蛭田芳文, 小西晃生, 福重哲志, 阿曽晶子, 藤井真行, 奥秋晟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.03.1986
Online AccessGet full text
ISSN0288-4348

Cover

More Information
Summary:一般に使用されている酸素吸入器具は, 実際にどの程度の酸素投与がなされているか不明確であり, 呼吸状態により吸入酸素濃度が影響される. 今回われわれは, 呼吸インピーダンス-プレチスモグラフ法によるレスピトレースを用い, 経気道的には何ら操作を加えることなく, 換気量と吸気速度を求め, それらの吸入酸素濃度に与える影響について検討した. 対象器具としては, 鼻カニューラ, ポリマスク, オキシゲンマスクおよび, ベンチマスクを用い, 酸素濃度はガスモニターで測定し, ガスサンプリングは被験者の咽頭部で行った. 換気量, 吸気速度が小さい場合には, ある程度一定した吸入酸素濃度を示すが, それらが大きくなると, 吸入酸素濃度はいったんピークを作った後急激に低下した. とりあえず, このピークの値を吸入酸素濃度として読むと, いずれの器具でも, 換気量を変化させても吸気酸素濃度は一定の傾向を示さなかった. 一方吸気速度が大きいときは, 吸入酸素濃度は低下し, この傾向は特に鼻カニューラに著明であった. リザーバーの付いたオキシゲンマスクでは, ポリマスクに比べ高い吸入酸素濃度が得られた. また, ベンチマスクでは, 換気量, 吸気速度による影響は, 他の器具に比べ小さかった. この結果から, 換気量, 吸気速度の大きな努力性呼吸時には, オキシゲンマスクや, ベンチマスクのほうが有利と考えられる. しかし, 実際には, ピーク値を吸入酸素濃度とすることには無理がある. われわれは, 一つの試みとして, 計算式:F_IO2 ;Σfx・Cx/Σfx(f:吸気速度, c:酸素濃度)により吸入酸素濃度を求めてみた. いずれにしても吸入酸素濃度は, 換気量, 吸気速度, 設定酸素濃度, 酸素供給量, 解剖学的死腔, 機械的死腔, などの影響を受け, 厳密に規定することは難しい.
ISSN:0288-4348