ステロイド服用中RA患者で術後性上顎嚢胞を両側に有する上顎前突症のLe fort I型骨切り術の経験

上顎前突症, 小下顎症, 小オトガイ症の上下顎移動術を行った. 患者は15歳時に慢性関節リウマチに罹患, プレドニゾロン5mg/日を術前5年前より服用中の33歳女性で, 18歳時に上顎洞根治術の既往もあり, 両側に術後性上顎嚢胞が形成されていた. 同患者の治療に際し, 多くの問題点や反省点を経験したので報告する. 治療開始時, 顎関節にリウマチ症状は認めなかったが, 自力開口26mm, 強制開口34mmと開口制限を認めた. 下顎頭の術後偏位が予想されたため, 患者に術後の顎関節症状の出現の可能性と両側の術後性上顎嚢胞は対孔を形成する予定を説明した. 術中, 下行口蓋動脈周囲の骨は肥厚し, 徒手...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 8; no. 2; pp. 86 - 87
Main Authors 喜久田利弘, 新井誠二, 嶋村知記, 都温彦, 横田盛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 15.08.1998
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ISSN0916-7048

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Summary:上顎前突症, 小下顎症, 小オトガイ症の上下顎移動術を行った. 患者は15歳時に慢性関節リウマチに罹患, プレドニゾロン5mg/日を術前5年前より服用中の33歳女性で, 18歳時に上顎洞根治術の既往もあり, 両側に術後性上顎嚢胞が形成されていた. 同患者の治療に際し, 多くの問題点や反省点を経験したので報告する. 治療開始時, 顎関節にリウマチ症状は認めなかったが, 自力開口26mm, 強制開口34mmと開口制限を認めた. 下顎頭の術後偏位が予想されたため, 患者に術後の顎関節症状の出現の可能性と両側の術後性上顎嚢胞は対孔を形成する予定を説明した. 術中, 下行口蓋動脈周囲の骨は肥厚し, 徒手でのdown fractureは困難でオステオトームにて離断した. 術後8週で左顎関節に著明な顎運動痛を訴えた. 当院整形外科を対診したところ, RAに伴う顎関節炎との診断にてステロイドの静脈注射を2回受けた. 当科的には, 抗炎症薬と抗不安薬の投与と一時, 開口訓練を中止した. 4ヵ月頃より寛解傾向を示し, 6ヵ月にて疼痛はほぼ消失, 開口度は術前の状態に回復した. その他の留意点に, リウマチ患者では貧血が多いので自己血や術時の止血など管理上の問題があった. また, 上顎骨切り部の嚢胞の同時処理には困難性があった. 他にステロイドカバーや感染予防などの問題点があり, 反省する事項が多かった. 質問 日歯大病院, 顎変形症プロジェクトチーム 松野智宣 1. 術前にPOMCに関しての患者の臨床症状はありましたか. 2. このような症例の場合, 先にPOMCに対するopeが必要とお考えですか. 回答 福岡大, 医, 歯口外 喜久田利弘 1. 症状はありました. 2. 術後性上顎嚢胞は, やはり, 顎矯正手術の前に行っておくべきだったと思います. 質問 日歯大, 2口外 内田稔 術前のCRPはいかがでしたか. 回答 福岡大, 医, 歯口外 喜久田利弘 CRPは上昇しておらず, RAの症状は安定している状態でした.
ISSN:0916-7048