人工心肺充填血に白血球除去濃厚赤血球を用いた小児開心術の臨床検討

(目的)輸血による多種類の白血球の混入による臓器への影響を減少させる目的で, 小児開心術における人工心肺充填血に白血球除去濃厚赤血球の使用を試みその臨床像を検討したので報告する. (方法)1989年1月から1990年8月までに人工心肺を使用した小児開心術87例(日齢5日から12歳, 平均2.62歳)を対象とした. そのうち白血球除去濃厚赤血球(leukocyto-depleted red cell)を充填血として用いた群(LDR群)37例と新鮮血を充填血として用いた群(コントロール群)50例について, 術後肝機能, 白血球数, ヘマトクリット値, 血小板数, 血液像, 人工呼吸器管理時間, 術...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 292
Main Authors 塩野則次, 高梨吉則, 吉原克則, 徳弘圭一, 藤井毅郎, 小澤司, 櫻川浩, 坂本達哉, 鹿野純生, 鈴木直人, 堀越淳, 小山信彌, 小松壽
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1991
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Summary:(目的)輸血による多種類の白血球の混入による臓器への影響を減少させる目的で, 小児開心術における人工心肺充填血に白血球除去濃厚赤血球の使用を試みその臨床像を検討したので報告する. (方法)1989年1月から1990年8月までに人工心肺を使用した小児開心術87例(日齢5日から12歳, 平均2.62歳)を対象とした. そのうち白血球除去濃厚赤血球(leukocyto-depleted red cell)を充填血として用いた群(LDR群)37例と新鮮血を充填血として用いた群(コントロール群)50例について, 術後肝機能, 白血球数, ヘマトクリット値, 血小板数, 血液像, 人工呼吸器管理時間, 術後入院日数を比較検討した. 白血球除去方法は, 白血球除去フィルター(旭メディカル社製セパセルR)を使用した. (成績)LDR群, コントロール群で年齢, 人工心肺時間, 人工心肺充填輸血単位数に有意差はなかった. コントロール群の1例に一過性の肝機能障害を認めたが, 術後GOT, GPT値は両群間に有意差はなかった. 白血球数は, 人工心肺回転中はLDR群で有意に少なかったが, 術後1病日, 2病日では逆にLDR群で有意に多かった. ヘマトクリット値は, 術中術後を通じて有意差はなかった. 血小板数は, LDR群で術中から術後6時間まで有意に少なかった. 血液像ではコントロール群において術直後の多核好中球の占める割合が有意に高かった. 人工呼吸器管理時間, 術後入院日数においは両群間に有意差はなかった. (結論)両群とも輸血による重大な副作用は出現しなかったが, 白血球除去により肝機能障害の予防が示唆された. 人工心肺充填新鮮血中の白血球は, 術後生体反応としての白血球上昇を抑制している可能性が示唆された. 白血球除去濃厚赤血球を小児の人工心肺充填血として用いたが, 術後合併症もなく, 白血球による有害反応予防にも有効であると思われ, 更に検討する必要があると考えられた.
ISSN:0546-1448