先天性表皮水疱症の一症例の口腔内所見
先天性表皮水疱症は, 常染色体優性または劣性遺伝による疾患で, 単純型, 接合部型, 優性または, 劣性栄養障害型の4型に大別され, 軽度の刺激により皮膚や粘膜に水疱やびらんを生じ, 瘢痕治癒を繰り返すといわれている. また, 歯科的には乳歯, 永久歯ともにエナメル質の形成不全が認められる. 今回我々は, 多数歯齲蝕を有する先天性表皮水疱症に対して, 全身麻酔下治療を行い良好な結果を得たので報告する. 患者:平成6年8月4日生 男児 初診日:平成9年5月22日 主訴:う蝕 家族歴:両親および親族に同疾患の発生は認められない 生育歴:平成6年8月N病院で出産と同時に全身的に水疱が認められ, 生後...
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Published in | 小児口腔外科 Vol. 8; no. 1; pp. 52 - 53 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本小児口腔外科学会
25.06.1998
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ISSN | 0917-5261 |
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Summary: | 先天性表皮水疱症は, 常染色体優性または劣性遺伝による疾患で, 単純型, 接合部型, 優性または, 劣性栄養障害型の4型に大別され, 軽度の刺激により皮膚や粘膜に水疱やびらんを生じ, 瘢痕治癒を繰り返すといわれている. また, 歯科的には乳歯, 永久歯ともにエナメル質の形成不全が認められる. 今回我々は, 多数歯齲蝕を有する先天性表皮水疱症に対して, 全身麻酔下治療を行い良好な結果を得たので報告する. 患者:平成6年8月4日生 男児 初診日:平成9年5月22日 主訴:う蝕 家族歴:両親および親族に同疾患の発生は認められない 生育歴:平成6年8月N病院で出産と同時に全身的に水疱が認められ, 生後5か月目, K病院皮膚科を受診し, 先天性表皮水疱症の単純型であるDowling-Meara型表皮水疱症と診断され, 1か月間入院をして, 紫外線照射治療とステロイド軟膏治療を行った. 本年5月通園中の施設の歯科検診時に, 多数歯う蝕が認められたため, 当科を勧められ来院した. 現症:足底に水疱が有意に認められるため, 歩行困難である. 口唇および口腔内粘膜にも機械的刺激により水疱やびらんを生じる. 口腔内所見:現在歯は, 下顎両側乳中切歯を除くすべての乳歯が萌出しており, 上顎前歯部および上下顎乳臼歯にう蝕がみられ, 全体的に石灰化不全が認められた. 処置および経過:口腔粘膜は軽度の刺激で, びらんを起こしやすいので極力機械的刺激を少なくする必要があり, 患児がまだ低年齢で治療に非協力的なことから, 検討の結果全身麻酔下での治療を行うこととした. 本年9月に全身麻酔下にて集中治療を施行した. 現在, 機械的刺激を避けるため改良した歯ブラシを用いて, 口腔衛生指導を行っている. 今後は, 定期的に口腔管理を継続していき, 健全な永久歯列への育成をはかっていく方針です. |
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ISSN: | 0917-5261 |