各種疾患および医療従事者におけるHCV抗体の陽性率

【目的】血液疾患, 肝疾患を対象としてHCV抗体保有率を測定し, 本抗体の臨床的意義を検討した. また医療従事者についての陽性率を各職種間で比較し, 院内感染の実態について調査した. 【方法】対象:一般献血者20,927例, GPT35単位以上の献血者145例, 熊大病院第二内科(主として血液疾患)患者237例, 肝疾患患者47例, 医療従事者786例. HCV抗体の測定はオーソHCV Ab ELISAテストにより行い使用書通りとした. 【結果】1989年11月16日から12月30日までの熊本県赤十字血液センターでの全献血者20,927例中239例(1.1%, がHCV抗体陽性であった. この...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 338
Main Authors 西村要子, 松尾裕子, 福吉葉子, 山口一成, 高月清, 河野文夫, 木村圭志, 紫藤忠博, 今村由美子, 男山順子, 福江親司, 楠本行彦, 吉原なみ子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1990
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】血液疾患, 肝疾患を対象としてHCV抗体保有率を測定し, 本抗体の臨床的意義を検討した. また医療従事者についての陽性率を各職種間で比較し, 院内感染の実態について調査した. 【方法】対象:一般献血者20,927例, GPT35単位以上の献血者145例, 熊大病院第二内科(主として血液疾患)患者237例, 肝疾患患者47例, 医療従事者786例. HCV抗体の測定はオーソHCV Ab ELISAテストにより行い使用書通りとした. 【結果】1989年11月16日から12月30日までの熊本県赤十字血液センターでの全献血者20,927例中239例(1.1%, がHCV抗体陽性であった. この中から無作為に抽出したGPT36単位以上145例中では13例(8.9%)が陽性であった. 熊大病院第二内科入院外来患者237例では28例(11.8%)であり, 肝疾患患者47例では17例(36.2%)とHCV抗体陽性率が最も高かった. 医療従事者は熊大病院422名, 国立熊本病院364名, 計786例中33例, 4.3%であった. 職種別では医師199例中4例(2.0%), 看護婦378例中22例(5.8%)臨床検査技師50例中3例(6.0%), 放射線技師22例中1例{4.5%}である. 【結論】HCV抗体陽性率は熊本県では1.1%であり, 男性が女性よりやや高率であった. しかしGPT35単位以上を示した献血者では8.9%と約10倍に陽性率が上昇した. また肝癌, 肝硬変などの肝疾患では36.2%とHCV感染が濃厚であることが確認された. 血液疾患11.8%は, 頻回輸血が高率の原因の一つと考えられる. 医療従事者については従来HBV感染の危険性について多くの報告があるが, 今回の成績でHCV抗体陽性率4.3%と一般献血者に比して高率であった. 職種別では検査技師6.0%, 看護婦5.8%と他の職種より高い陽性率を示した. このことはHBV同様HCVも患者や汚染材料からの院内感染の危険性を示唆するものと考えられる.
ISSN:0546-1448