血管硬化剤注入後に心停止をきたした1例
血管硬化剤にはショック等の重篤な副作用が報告されている. 今回われわれは, 顔面の海綿状血管腫に対して血管硬化剤注入後, 心停止をきたした小児症例を経験した. 〔症例〕4歳, 男児. 身長101cm, 体重15.6kg. 出生時より左頬部および左下口唇に海綿状血管腫を認めるほかに, 特記すべき既往症はない. 過去4回, 酸素-亜酸化窒素-セボフルラン下に3%ポリドカノール(院内製剤, 15%エタノール溶液)を用いた硬化療法が施行された. 前回の硬化剤注入後, 気管チューブが抜去され, 高度の徐脈から心停止に至ったという経緯がある. 速やかな蘇生が行われたため, 術後には何ら異常所見を認めなかっ...
Saved in:
Published in | 蘇生 Vol. 20; no. 3; p. 273 |
---|---|
Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
12.09.2001
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0288-4348 |
Cover
Summary: | 血管硬化剤にはショック等の重篤な副作用が報告されている. 今回われわれは, 顔面の海綿状血管腫に対して血管硬化剤注入後, 心停止をきたした小児症例を経験した. 〔症例〕4歳, 男児. 身長101cm, 体重15.6kg. 出生時より左頬部および左下口唇に海綿状血管腫を認めるほかに, 特記すべき既往症はない. 過去4回, 酸素-亜酸化窒素-セボフルラン下に3%ポリドカノール(院内製剤, 15%エタノール溶液)を用いた硬化療法が施行された. 前回の硬化剤注入後, 気管チューブが抜去され, 高度の徐脈から心停止に至ったという経緯がある. 速やかな蘇生が行われたため, 術後には何ら異常所見を認めなかった. 今回, 5回目の硬化剤注入が予定された. 前投薬にはミダゾラムを注腸投与し, 麻酔は酸素-亜酸化窒素-セボフルランで導入, 維持した. 術中は心電図, 血圧, 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO_2 ), 終末呼気炭酸ガス分圧(ETCO_2 ), 麻酔ガス濃度等をモニターした. 硬化剤には前回と同様, 院内製剤の3%ポリドカノールを用いた. まず頬部の血管腫に対して5mlを注入し同部を5分間圧迫した後, 下口唇の血管腫に対しても5ml注入し, 同部を3分間圧迫して手術は終了した. 血圧, SpO_2 , ETCO_2 に異常を認めなかった. セボフルラン, 亜酸化窒素の投与を中止し100%酸素としたが, 徐々に徐脈となり2分後に心拍停止となった. 直ちに心マッサージを行い, アトロピン0.3mgを静脈内投与したところ1分後に自己心拍が再開した. その後, 十分な覚醒と呼吸循環の安定を確認してから抜管した. 術後は特に異常を認めることなく, 術後3日目には無事退院した. なお, 心拍再開直後の静脈血アルコール濃度は0.1mg/ml以下であった. 〔考察〕今回の心停止の原因として, 硬化剤溶媒のエタノールよりもポリドカノールそのものである可能性が高いと推察された. また前回の心停止も, ポリドカノールが原因であった可能性がある. |
---|---|
ISSN: | 0288-4348 |