鍼はなぜ効くか
本来の鍼灸医学とは, 「特別の施術点であるツボに鍼灸刺激を施す事によって, 生体の異常な状態を本来の正常(生理的)な状態にもどすことを目的」としている. しかし, 「正常な状態(知覚)を異常(痛覚閾値の上昇)にする鍼(ハリ麻酔)の研究」が, 鍼の研究そのものであるかのような印象を与える多数の研究が発表されている. また, 鍼施術の全身的な効果をもって, 鍼の施術効果そのものであるような記述をする者が多く, ツボの特異性を否定するような研究が多い印象を受ける. さらに, 臨床的な鍼施術効果の研究対象を病名に求める傾向があるが, ここ十年以上に渡って, とりわけ進歩発展したと言えるであろうか. 従...
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Published in | 日本鍼灸良導絡医学会誌 Vol. 27; no. 4; p. 14 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本良導絡神経学会
01.09.1999
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ISSN | 0286-1631 |
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Summary: | 本来の鍼灸医学とは, 「特別の施術点であるツボに鍼灸刺激を施す事によって, 生体の異常な状態を本来の正常(生理的)な状態にもどすことを目的」としている. しかし, 「正常な状態(知覚)を異常(痛覚閾値の上昇)にする鍼(ハリ麻酔)の研究」が, 鍼の研究そのものであるかのような印象を与える多数の研究が発表されている. また, 鍼施術の全身的な効果をもって, 鍼の施術効果そのものであるような記述をする者が多く, ツボの特異性を否定するような研究が多い印象を受ける. さらに, 臨床的な鍼施術効果の研究対象を病名に求める傾向があるが, ここ十年以上に渡って, とりわけ進歩発展したと言えるであろうか. 従来の研究方法は, 薬品を例にあげれば, 薬理効果を考えないで, どのような病名に効果があるかを捜し求めているようなものである. 局所における鍼の効果, やや広い範囲における効果, 全身効果に関して, 「知覚」と「交感神経」, あるいは「筋の緊張」などから, 鍼の作用効果を考えるべきである. 鍼施術は侵害刺激であり, 放出されるヒスタミン等に由来する局所の毛細血管の弛緩は血流を改善し, 量的には微細であるが, 質的に重大な損傷を与えられていると言う情報を生体に与えると考えられる. 虚血痛に対する効果や感覚の修飾, 感覚の下降性抑制(ハリ麻酔), 深部組織に対する鍼侵害刺激の交感神経に対する影響などから鍼の効果を推察する. また, 鍼施術の効果と研究結果の考え方について, 「鍼施術効果の研究」についての提言とハリ麻酔の研究についての考え方を述べる. さらに, 刺激の「質と量」に関して「鍼直流通電療法」について考察する. |
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ISSN: | 0286-1631 |