臍帯血球と新生児赤血球膜上に発現する人工Tk receptorの性状に関する検討

• Published in: 日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 2; p. 328
• Main Authors: 佐藤千秋, 平山美津江, 渋谷温, 畑俊夫, 市川洋一, 佐藤文治, 沖深美
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 日本輸血学会 01.05.1994
• ISSN: 0546-1448

【目的】臍帯赤血球や新生児赤血球膜上のI式血液型の糖鎖構造は, 成人赤血球のそれと異なることが知られている. 今回, これらの赤血球膜上に人工的にTk reseptorを発現させ, その性状をレクチンとの反応性で比較検討した. 【材料および方法】患者の腹水より分離されたBacteroldes flagilis(B.F.)菌をbrain heart infusion(BHI)培地で嫌気的に培養した培養液, ならびに市販のB.F.由来endo-β-galactosidaseを用いた. B.F.培養液による赤血球処理は, Johnらの方法に従った. また市販のendo-β galactosidaseについては, 酵素の至適条件下にて処理した. FITCラベルしたGS IIレクチンを用い, FCMにてreceptorの発現状態を解析した. 【結果】B.F.培養液とendo-β-galactosidaseで処理した臍帯血球と新生児, 成人の各赤血球は, Arachls hypogaea(PNA)とGS IIのレクチンに4+の反応を示し, Salvia sclarea, Salvia horminum, Glycin soja, Vicia cretica, Helix pomatiaの各レクチンとは反応しなかった. またTk receptorが発現した各赤血球に対するPNA, GS IIの各レクチンの反応を被血球凝集価にて検討したところ, 臍帯血球や新生児赤血球は, 成人赤血球よりレクチン感受性が高い結果が得られた. 【まとめ】臍帯血球や新生児赤血球は, 成人赤血球より, Tk reseptorが発現しやすい糖鎖構造の状態にあることが推察された.