骨軟骨腫とその文献的考察

骨軟骨腫は, 骨の表面に生じる軟骨性の増殖物であり, 若年者の四肢の長骨に好発する疾患で, 口腔領域に生ずることは, きわめて稀であると言われている. 今回我々は右側下顎頭部に発生した骨軟骨腫の症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 患者は52歳男性で, 咬合不全と顔貌の非対称性を主訴に来院した. X線像では, 右側下顎頭部に内上方への進展を示唆する骨の異常が認められ, その内部においては, テニスラケット状の混合像を呈していた. CT所見に於いては, 本来の下顎頭部分に付随するように, 骨様像が側頭下窩と蝶形骨へと拡大した像を呈す. 基部は切痕部上方の下顎頸部に及んでいる. 境界...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科放射線 Vol. 36; no. 2; pp. 108 - 109
Main Authors 上野博司, 香川豊宏, 嶋田英敏, 瀬々良介, 小川和久, 和田忠子, 森進一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.06.1996
Online AccessGet full text
ISSN0389-9705

Cover

More Information
Summary:骨軟骨腫は, 骨の表面に生じる軟骨性の増殖物であり, 若年者の四肢の長骨に好発する疾患で, 口腔領域に生ずることは, きわめて稀であると言われている. 今回我々は右側下顎頭部に発生した骨軟骨腫の症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 患者は52歳男性で, 咬合不全と顔貌の非対称性を主訴に来院した. X線像では, 右側下顎頭部に内上方への進展を示唆する骨の異常が認められ, その内部においては, テニスラケット状の混合像を呈していた. CT所見に於いては, 本来の下顎頭部分に付随するように, 骨様像が側頭下窩と蝶形骨へと拡大した像を呈す. 基部は切痕部上方の下顎頸部に及んでいる. 境界は明瞭で, 外側翼突板に向かって鶏冠状を呈しその内部には, Hight Densityな梁状化の部分が認められた. MR画像では, 関節円板および下顎頭は前方に位置し, 下顎頭と外側翼突筋部に囲まれた前内側面から鶏冠状の腫瘤像が認められる. また腫瘤内部においては不均一な信号を呈していた. 骨軟骨腫の報告は, Curtin(1959年)が最初でそれ以前は, 過形成, 肥大, 骨瘤, などの表現で報告されていた. 国内では, 香月ら(1978年)が最初とおもわれる. 今回われわれが検索した, 口腔領域において骨軟骨腫として症例報告された文献は45例あり, その中で関節頭に見られたものは外国で10報告(10例), 国内では自験例と抄録を含めて8報告(13例), 筋突起は7例だった. 今回の症例において, この腫瘍性の増殖物が下顎頭部の過形成に外軟骨腫が加わってできた物か, あるいは骨軟骨腫なのか, その鑑別は, 臨床所見では不十分だったが, 病理組織所見より, 軟骨と骨の著しい増殖が確認されたことから, 骨軟骨腫とした.
ISSN:0389-9705