形成外科的手術によりADLの改善をみた, 両膝離断に片麻痺をともなった一症例

両下肢切断患者が片麻痺となり, そのリハビリテーション(以下, リハ)の過程でADL改善のために皮膚瘢痕に対する形成外科的手術を必要とした症例を経験したので報告する. 症例は41歳の男性, 眼鏡商. 5歳の時掘りごたつで火傷し, 両膝関節離断を受けた. 両膝義足により自立歩行していたが, 腰部から断端にかけて皮膚は瘢痕性であり, 股関節には屈曲制限があった. 1994年1月, 左中大脳動脈領域の脳梗塞を発症し右片麻痺となった. 右上肢は実用性は期待できなかったが, 右股関節には屈曲伸展の随意運動が出現したため, 移動のゴールを左片手駆動式車椅子と義足歩行の併用として, 医学的リハを行った. そ...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 32; no. 12; p. 969
Main Authors 吉永勝訓, 佐々木健, 稲田晴生, 山崎正子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1995
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ISSN0034-351X

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Summary:両下肢切断患者が片麻痺となり, そのリハビリテーション(以下, リハ)の過程でADL改善のために皮膚瘢痕に対する形成外科的手術を必要とした症例を経験したので報告する. 症例は41歳の男性, 眼鏡商. 5歳の時掘りごたつで火傷し, 両膝関節離断を受けた. 両膝義足により自立歩行していたが, 腰部から断端にかけて皮膚は瘢痕性であり, 股関節には屈曲制限があった. 1994年1月, 左中大脳動脈領域の脳梗塞を発症し右片麻痺となった. 右上肢は実用性は期待できなかったが, 右股関節には屈曲伸展の随意運動が出現したため, 移動のゴールを左片手駆動式車椅子と義足歩行の併用として, 医学的リハを行った. その過程で, 脳卒中発症前には可能であった座位姿勢が, 臥床による股関節拘縮の進行のために困難になった. また患者は発症前から肛門周囲の瘢痕のために座位では便排出が困難なため前かがみの立位で排便を行っていたが, 片麻痺によりそれも不可能になった. そこで安定した座位姿勢の獲得と排便の自立とを目標に, 2回にわたる形成外科的手術を施行した. 術後のリハにより, 杖使用による義足歩行が可能となった. また座位による排便も可能となり, 最終的に入浴に軽介助を要する以外はADLの自立をみた. 家屋改造により在宅生活も可能になったが, 右上肢麻痺のために眼鏡の調整作業は困難であり, 妻と役割分担を交代のうえ復業を目指している.
ISSN:0034-351X