新根管充填剤の物性に関する比較検討について

根管治療の失敗のおもな原因は, 不完全な根管充填にある. 理想的な根管充填を行うためには, 正確な術式のみならず, 使用する根管充填剤が組織に対して無刺激で, 根管壁に対する壁着性に優れているなどのいくつかの所要性質を備えていなければならない. 現在広く使用されている根管充填剤は, 根管壁やガッタパーチャーポイント間の緊密な封鎖を重視するために, 酸化亜鉛ユージノール系のものが多い, しかしユージノールの持つ組織に対する刺激性が問題となり, 近年, 非ユージノール系の根管充填剤が盛んに研究されている. われわれの教室でも水酸化カルシウムを主成分とする固化する特性を有する根管充填剤を試作した....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 8; no. 1; p. 137
Main Authors 橋本正博, 小野一弘, 松本光吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 01.03.1988
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:根管治療の失敗のおもな原因は, 不完全な根管充填にある. 理想的な根管充填を行うためには, 正確な術式のみならず, 使用する根管充填剤が組織に対して無刺激で, 根管壁に対する壁着性に優れているなどのいくつかの所要性質を備えていなければならない. 現在広く使用されている根管充填剤は, 根管壁やガッタパーチャーポイント間の緊密な封鎖を重視するために, 酸化亜鉛ユージノール系のものが多い, しかしユージノールの持つ組織に対する刺激性が問題となり, 近年, 非ユージノール系の根管充填剤が盛んに研究されている. われわれの教室でも水酸化カルシウムを主成分とする固化する特性を有する根管充填剤を試作した. 当教室の井上は, 培養細胞を用いその毒性を調べ, 既存の根管充填剤と比較した結果, 有意に毒性が低いことが判明した. そこで今回われわれは, 試作根管充填剤の物性(硬化時間, 封鎖性, フロー, X線造影性)について, 現在市販されている根管充填剤と比較検討したところ以下のことがわかった. 硬化時間は, キャナルスと比較してやや短いが臨床上問題はない. 封鎖性は, キャナルスと比較して優れている. フローに関してもキャナルスが明らかに良好であるが, 根管充填に要する処置時間を考えると試作根管充填剤は, キャナルスと比較して臨床上劣るものではない. X線造影性が, ガッタパーチャーポイントを100%としてキャナルスが80%, A-2が39%, A-3が56%, Bが69%であった. キャナルスと比較してやや造影性が劣るが, 象牙質よりも造影性が高く象牙質との境界の識別は十分に可能である. 以上のことより, 試作根管充填剤は物性の点からみても良好であるといえる.
ISSN:0285-922X