当院における洗浄血小板輸血の経験

<目的>当院において血液疾患患者の増加に伴い血液製剤の使用数も増加している. なかでも血小板製剤の使用増加は著しくそれに伴い血小板輸血時の副作用による発熱や発疹を生じる例を多く経験するようになり, その大部分はHLA抗体や血小板抗体陽性であるが, 今回我々はこれらの抗体は陰性で, 原因が血漿側にあると思われる副作用例を3例経験した. この症例に対して洗浄血小板輸血を行いその有用性を認めたので報告する. また洗浄血小板の遠心条件の変化等により血小板回収率, 蛋白除去率についての検討を加えると共に, 凝集能等の機能試験も行ったので合わせて報告する. さらに, 当院における過去5年間の血...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 2; p. 514
Main Authors 成重真美, 徳水真美, 利光昭次, 前田宏明, 石井孝典, 佐分利能生, 宮崎重武, 岩崎和美, 財前良行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1993
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ISSN0546-1448

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Summary:<目的>当院において血液疾患患者の増加に伴い血液製剤の使用数も増加している. なかでも血小板製剤の使用増加は著しくそれに伴い血小板輸血時の副作用による発熱や発疹を生じる例を多く経験するようになり, その大部分はHLA抗体や血小板抗体陽性であるが, 今回我々はこれらの抗体は陰性で, 原因が血漿側にあると思われる副作用例を3例経験した. この症例に対して洗浄血小板輸血を行いその有用性を認めたので報告する. また洗浄血小板の遠心条件の変化等により血小板回収率, 蛋白除去率についての検討を加えると共に, 凝集能等の機能試験も行ったので合わせて報告する. さらに, 当院における過去5年間の血液製剤の使用状況及びHI, A適合血小板等の使用状況についても述べる. <結果>対象の症例はAML2例, CML1例の計3例で血小板輸血後に発熱や発疹のみられた症例に洗浄血小板をAML計5回, CML計2回使用した. 洗浄血小板の調整法は, アフェレーシス濃厚血小板に, 0.9%NaCl+クエン酸Naを加え3000rpm7minで遠心, 上清を除去後0.9%NaCl+クエン酸Naで再浮遊させた. 洗浄血小板輸血後CPI(1時間値)は7回中6回が有効(1.0以上)で1.90±1.00, CPI(24時間値)は7回中6回が有効(0.6以上)で1.45±0.95であった. これらの症例について, 洗浄血小板輸血後に発熱や発疹などは認められず, 血小板製剤から血漿成分を除去することにより, これらの症状が軽減されたと思われる. また洗浄血小板は遠心条件3000rpm7minの時, 血小板回収率92%, 蛋白除去率97%となり, 高い蛋白除去率の割に血小板の損失は少なかった. 洗浄後の血小板凝集能は製造後3時間まで安定していた. 尚, 3症例とも患者血清中には抗IgA抗体, 抗Gm抗体等は検出されなかった. <まとめ>以上の症例から, 洗浄血小板は十分に臨床効果を期待しうるものである. また, 洗浄血小板は, 調整が容易であり血漿蛋白による副作用を軽減するために有効であると思われる.
ISSN:0546-1448