絵カードを用いた失語症患者の知能検査

「目的」知能評価には従来, 言語性テストと動作性テストがある. しかし, 失語症患者では言語性テストの困難さと共に, 左半球障害による構成障害や失行のため動作性テストも拙劣となる. そこで今回我々は, 失語症患者の知能を, ある一連の物語, あるいは意味をもつ絵画の並び換えにより, 「合理的, 統合的判断能力」として評価することを試みた. 「対象」健常成人12名(男性5名, 女性7名;平均60.8歳)と, 失語症患者28名(男性19名, 女性9名;平均60.0歳)で, 失語のタイプはBroca 17名, Wernicke 2名, 混合性7名, 健忘2名であった. 「方法」ある一連の意味(種蒔き...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 35; no. 11; p. 878
Main Authors 宇田川素子, 川津学, 川平和美, 田中信行, 山下真理, 古庄弘典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1998
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Summary:「目的」知能評価には従来, 言語性テストと動作性テストがある. しかし, 失語症患者では言語性テストの困難さと共に, 左半球障害による構成障害や失行のため動作性テストも拙劣となる. そこで今回我々は, 失語症患者の知能を, ある一連の物語, あるいは意味をもつ絵画の並び換えにより, 「合理的, 統合的判断能力」として評価することを試みた. 「対象」健常成人12名(男性5名, 女性7名;平均60.8歳)と, 失語症患者28名(男性19名, 女性9名;平均60.0歳)で, 失語のタイプはBroca 17名, Wernicke 2名, 混合性7名, 健忘2名であった. 「方法」ある一連の意味(種蒔き, 発芽, 収穫等)をもつ3~6枚組の絵カード計12パターンを用い, 時系列に従って配列させた. なお, 検査前に, 別の3枚組の絵カード3パターンを用いて, 検査の意味, 方法を十分理解させた. 「結果とまとめ」健常成人と失語症患者のHDS-Rはそれぞれ平均27.2/30点と10.0/30点で当然のことながら有意差を認めた. また, 絵カード検査もそれぞれ平均84.8/90点と72.0/90点で有意差を認めた. 失語症患者の絵カード検査と, HDS-RおよびKohs原法の結果との間に相関は認めなかったが, Kohs簡易式およびRCPMの結果との間には相関を認めた. HDS-RやKohs原法に比べ, 絵カード検査は失語症患者の知的能力の評価に有用であると思われた.
ISSN:0034-351X