職場からの遁走をきたした事例について

職場から失踪する遁走という現象について, 一般的にはまだよく知られていない病態である. 遁走は自殺と等価であるといわれるが, 職場側からすると, 職務怠慢や無断欠勤ととらえられがちである. 遁走は疾病に基づく症状の一つであり, 精神科治療が必要であることを職場に理解してもらわなければならない. その意味で, 我々が経験した2つの事例を報告した. ともに, 心身の疲労の状態が続いていたにもかかわらず, 周囲の人からうつ状態を気付かれず, また十分な休養もとれず, 突如として, 職場から飛び出してしまったケースである. 遁走の後に, 精神科医の診察と治療を受け, うつ状態が休息と薬物療法により,...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 42; no. 1; p. 38
Main Authors 向山隆志, 小泉典章, 田口喜一郎, 村山忍三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 20.01.2000
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ISSN1341-0725

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Summary:職場から失踪する遁走という現象について, 一般的にはまだよく知られていない病態である. 遁走は自殺と等価であるといわれるが, 職場側からすると, 職務怠慢や無断欠勤ととらえられがちである. 遁走は疾病に基づく症状の一つであり, 精神科治療が必要であることを職場に理解してもらわなければならない. その意味で, 我々が経験した2つの事例を報告した. ともに, 心身の疲労の状態が続いていたにもかかわらず, 周囲の人からうつ状態を気付かれず, また十分な休養もとれず, 突如として, 職場から飛び出してしまったケースである. 遁走の後に, 精神科医の診察と治療を受け, うつ状態が休息と薬物療法により, ともに回復している. 以上より, 職場からの遁走に至らぬよう, 職場における自殺の予防と同様に, 前駆する症状の早期発見が重要なこと, 職場復帰にも慎重かつ十分な配慮が必要なことを強調したい.
ISSN:1341-0725