原発巣不明の耳下腺内転移性悪性黒色腫の治療経験

はじめに:悪性黒色腫(以下MM)は悪性腫瘍全体の約1%を占める. 頭頸部に初発するもののうち約5%は原発巣が不明であったと報告されている. 原発巣の自然消退というMMに特異的な現象が関係していると考えられる. このような原発巣が不明な転移性のMMに対して切除手術後の化学療法の有用性については賛否両論がある. 症例:74歳女性. 主訴:右耳下腺部の腫脹. 右頬部皮膚腫瘍. 現病歴:平成15年2月腫瘤が増大, 増加したため再度吸引細胞診を施行したところclass V malignant melanomaの診断. 右頬部の腫瘍を原発として疑い形成外科へ紹介となった. 既往歴:平成5年日本医科大学第1...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 605
Main Authors 大久保暁司, 島本実, 青木律, 百束比古, 中溝宗永, 横島一彦, 小泉康雄, 青木見佳子, 矢部朋子, 吉野公二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.12.2003
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Summary:はじめに:悪性黒色腫(以下MM)は悪性腫瘍全体の約1%を占める. 頭頸部に初発するもののうち約5%は原発巣が不明であったと報告されている. 原発巣の自然消退というMMに特異的な現象が関係していると考えられる. このような原発巣が不明な転移性のMMに対して切除手術後の化学療法の有用性については賛否両論がある. 症例:74歳女性. 主訴:右耳下腺部の腫脹. 右頬部皮膚腫瘍. 現病歴:平成15年2月腫瘤が増大, 増加したため再度吸引細胞診を施行したところclass V malignant melanomaの診断. 右頬部の腫瘍を原発として疑い形成外科へ紹介となった. 既往歴:平成5年日本医科大学第1病院にて右頬部の皮膚腫瘍のbiopsyにて良性のmelanomaと診断された. 平成11年12月右耳下腺部の腫瘤に対し耳鼻科にて吸引細胞診を施行したが良性. 治療経過:頬部腫瘍は17×15mm, 頸部CTにて約20mmのリンパ節の腫脹認めた. 5SCD正常値. 4月7日耳下腺摘出, 頸部リンパ節郭清および頬部皮膚腫瘍の摘出を施行した. 耳下腺内のリンパ節に悪性黒色腫の細胞を認めた. 頬部皮膚腫瘍は脂漏性角化症と診断された. 術後化学療法の選択のためPET, CT, シンチグラフィーを含めた全身検索を再度行ったが原発巣と思われる部位は同定できなかった. 原発巣不明の転移性MMとして術後補助療法を行うこととした. 現在までにDAV feron療法を2クール終了している. 考察:広範摘出を施行すれば補助療法は不要であるとする文献がある. 転移性のMMとして治療する場合には化学療法による補助療法が一般的であるが, 原発巣の自然消退をもたらすような強い免疫を有している患者に対して免疫を低下させるような化学療法を行うことが正しいのかは疑問である. このように治療方法が確立していない疾患の治療にあたっては患者さんのQOLを考えつつ個別に治療を選択していく必要があり, 治療方法の決定が非常に難しいと考えた.
ISSN:1345-4676