在宅支援における看護相談室の役割~壮年期ターミナル患者の一事例を通して

<はじめに>札幌厚生病院は, 病床数494床の急性期医療を担う一般病院である. 平均在院日数は17.5日(16年度)であり, 治療が必要な状態で在宅療養に移行するケースが増えている. 看護相談室は, 病院に療養病床や関連施設を併設していない為, 地域の医療福祉等の連携窓口としての役割がある. また, ターミナル期の医療依存度が高いケースについては訪問看護を実施している. ターミナル期の患者家族が安心して療養生活を継続する為には, 1.本人・家族が在宅生活を希望する, 2.症状がコントロールされている, 3.生活を支えるための社会資源導入が可能である, 4.専門的医療サービスの提供が...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 468
Main Authors 和泉裕子, 須藤由利子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 01.09.2005
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Summary:<はじめに>札幌厚生病院は, 病床数494床の急性期医療を担う一般病院である. 平均在院日数は17.5日(16年度)であり, 治療が必要な状態で在宅療養に移行するケースが増えている. 看護相談室は, 病院に療養病床や関連施設を併設していない為, 地域の医療福祉等の連携窓口としての役割がある. また, ターミナル期の医療依存度が高いケースについては訪問看護を実施している. ターミナル期の患者家族が安心して療養生活を継続する為には, 1.本人・家族が在宅生活を希望する, 2.症状がコントロールされている, 3.生活を支えるための社会資源導入が可能である, 4.専門的医療サービスの提供が可能であることが必要である. 今回, 夫と二人暮しの壮年期(30代)で, 胆管細胞癌ターミナル期にある女性が在宅療養を希望した. 入院中に家族間の意志や在宅支援体制を十分に調整できないまま訪問看護を開始した. この事例を通し在宅支援における看護相談室の役割を再考したので報告する. <看護の実際>1.本人・家族の希望;本人は病名を告知されており, 在宅療養を希望していた. 夫は医療者・妻の家族に自分の思いを伝えられない事が多かったが「家で二人で過したい」と希望した. 姉は介護をしたかったが幼い子供も居り, 妹の夫に頼むしかなかった. また家族間で予後に対する認識が一致していなかった. 病状を冷静に判断し, 調整出来る人がいなかった. 2.疼痛コントロール;本人の精神的な不安が関与しており, コントロールが図れないまま退院した. 在宅においても夫が不在の時は特に苦痛の訴えが強かった. ホスピスケア認定看護師と訪問診療医と連携し調整するが, コントロールは難しかった. 3.生活支援;日中の生活をヘルパー・姉の協力・訪問看護で支え, 夜間は夫が介護した. しかし, 病状の悪化に伴い日常生活における介護量が増え, 夫が休職し介護する事になった. 4.在宅療養における医療提供の限界;どの時期まで在宅での生活を継続するか, 方向性を家族と最期まで共有できなかった. 病状の認識に, 医療従事者と家族間でズレがあったが調整することは難しかった. 1か月後, 誤嚥により心肺停止で救急車搬送され病院で最期を迎えた. <考察>在宅を支えるには, 1)病院医療が多くの職種によって支えられているように, 在宅ケアでも多職種によるネットワーク, チームケアが必要だと言われている. 今回の事例は, 退院に向けた準備期間も短く, 患者家族とのコミュニケーションや信頼関係を十分に築けないまま訪問看護を実施した. そのため, 本人や夫の思いを引き出した連携や調整を実施することが出来なかった. 入院期間が短くなる中で時期を逃すことなく, ターミナル期の在宅療養を支えていく為には, 入院中の早い時期から本人・家族と関わり, 意向を明らかにしておくことが必要である. また, 目標を共有し本人・家族を中心としたチーム作りをして支援体制を整えることが重要である. そのために看護相談室は, ケアチームをまとめ・牽引していく役割を担う必要がある. 1)二ノ坂保喜:「在宅ホスピス医の立場から」訪問看護と介護 2003, Vol.8, No.6
ISSN:0468-2513