外傷性腹腔内大量出血手術症例の検討

外傷性腹部実質性臓器損傷による腹腔内大量出血症例は, 来院時に重篤な出血性ショックの状態であり適切かつ迅速な蘇生術を必要とする. ショック状態から脱出できない場合は, 緊急開腹による止血術が必要となる. 平成4年から平成10年までに, 函館五稜郭病院で緊急開腹術を余儀なくされた大量出血症例5例について検討した. 平均年齢46.2歳(20~57歳), 男性4例女性1例. 外傷の機転は4例が交通事故, 1例が墜落であった. 損傷臓器は, 肝臓破裂及び挫滅が2例, 脾臓破裂3例, 膵臓挫傷1例, 肝動脈損傷1例, 上腸管膜動脈損傷1例(重複あり)であった. 5例中4例までが手術室入室前に挿管されてお...

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Published in蘇生 Vol. 17; no. 3; p. 186
Main Authors 仙石和文, 仙石早苗, 黄仁謙, 岡田華子, 越後谷雄一, 高畑治, 久保田宗宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1998
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ISSN0288-4348

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Summary:外傷性腹部実質性臓器損傷による腹腔内大量出血症例は, 来院時に重篤な出血性ショックの状態であり適切かつ迅速な蘇生術を必要とする. ショック状態から脱出できない場合は, 緊急開腹による止血術が必要となる. 平成4年から平成10年までに, 函館五稜郭病院で緊急開腹術を余儀なくされた大量出血症例5例について検討した. 平均年齢46.2歳(20~57歳), 男性4例女性1例. 外傷の機転は4例が交通事故, 1例が墜落であった. 損傷臓器は, 肝臓破裂及び挫滅が2例, 脾臓破裂3例, 膵臓挫傷1例, 肝動脈損傷1例, 上腸管膜動脈損傷1例(重複あり)であった. 5例中4例までが手術室入室前に挿管されており, 全例カテコラミン持続静注を行っていた. 入室時平均SBP/DBPは71/40, HRは140であり入室直後の血液ガス分析ではpH, BEの平均値は7.085, -15.6と著名なacidosisを呈していた. 平均手術時間は2.79時間, 腹腔内出血量を含めた術中出血量は平均10,799ml(6,835~22,403ml)輸液量並びに輸血量は平均4,780ml(570~9,750ml)並びに5,050ml(2,000~9,200ml), 術中尿量は平均126ml(0~1,670ml)であった. 受傷前の合併症として, 2症例に食道静脈瘤を有する肝硬変があり, 4症例にHTがあった. 術後合併症では, 出血コントロール不良で翌日に2症例が死亡, 腎不全合併が2症例(HD・HF施行)肝機能障害3症例(1例は肝不全), ARDSは1症例あり6日後に1症例が多臓器不全で死亡, その他の2症例は合併症を残すことなく軽快退院となった. 生死を分けたのは, 術前合併症の有無と肝臓の損傷部位及び損傷形態であった.
ISSN:0288-4348