高温環境下におけるラットの脳内アミノ酸の変動

深部体温が42℃以上になると重篤な臓器障害が生じることがあるが, それに伴う脳内アミノ酸の変動は解明されていない. そこで実験的に高温環境下におけるラットの脳内アミノ酸を測定し比較検討した. <方法>Wistar系雄性ラットを使用し, 海馬(CA1)にマイクロダイアリシスプローブを刺入固定し灌流液を採取, グルタミン酸, アスパラギン酸, グリシン, タウリン, γ-アミノ酪酸を算定した. 高体温を作成する方法は, heating lampによる輻射熱に従った. 実験群は, G0:対照, G1:脳局所温を40℃に維持し30分後, 治療開始, G2:同様に42℃に維持, サンプリング...

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Published in蘇生 Vol. 12; pp. 98 - 99
Main Authors 西山隆久, 臼田美穂, 松本晶平, 浜田良一, 荻原幸彦, 井本裕子, 渡辺省五, 畑山聖, 一色淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1994
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ISSN0288-4348

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Summary:深部体温が42℃以上になると重篤な臓器障害が生じることがあるが, それに伴う脳内アミノ酸の変動は解明されていない. そこで実験的に高温環境下におけるラットの脳内アミノ酸を測定し比較検討した. <方法>Wistar系雄性ラットを使用し, 海馬(CA1)にマイクロダイアリシスプローブを刺入固定し灌流液を採取, グルタミン酸, アスパラギン酸, グリシン, タウリン, γ-アミノ酪酸を算定した. 高体温を作成する方法は, heating lampによる輻射熱に従った. 実験群は, G0:対照, G1:脳局所温を40℃に維持し30分後, 治療開始, G2:同様に42℃に維持, サンプリングは, 加温前(S_0 ), 目標温到達直後(S_1 ), 維持10分(S_2 ), 維持30分(S_3 ), 治療30分後(S_4 )とした. <結果・考察>G0では, 有意な変化はみられなかった. G1ではS_0 S_1 S_2 S_3 と時間の経過とともにアミノ酸, 脳血流, 脳酸素消費量は, いずれも有意に上昇した. またS_4 で各々有意に低下した. G2では, S_1 でいずれのアミノ酸も上昇をみせ, その後S_2 S_3 S_4 で低下は認められなかった. 脳酸素消費量はS_1 で低値を示しその後も変化はなかった. 高体温下では, 酸素供給低下と酸素需要量の上昇が組織の虚血をもたらす. G1では, 酸素需要量の上昇が脳血量の上昇を上回り虚血が生じ, S_4 (冷却)で, 脳血流の低下以上に酸素需要も低下したためと考えられる. G2では熱負荷による組織障害で, 酸素需要を満たせなかったためと考えられる. 脳内アミノ酸は, 高体温下での脳の侵襲性を示す可能性が示唆された.
ISSN:0288-4348