死体腎移植後に急性循環不全におちいり管理に難渋した1例

我々は死体腎移植後に, 呼吸・循環不全, 肝障害をきたした症例を経験し管理に難渋したので報告する. 〔症例〕37歳. 女性. SLEによる腎不全にて21歳の時より透析を施行していた. 26歳の時, 死体腎移植を受けたが機能せず, 透析を継続していた. 〔経過〕平成10年7月死体腎移植術施行. 術後2日目の透析施行時, 血圧低下のため透析不能となり, 3日目に肺水腫のためICU入室となった. 入室後, 呼吸管理とともにCHDFを施行した. この結果, 低血圧は持続していたものの, 呼吸状態は徐々に改善を認め, 術後7日目にICU退室となった. しかし, 今回も病棟での透析管理は困難で, 術後9日...

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Published in蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 245
Main Authors 梶原秀年, 河合良介, 内田淳子, 日高秀邦, 渡辺泰彦, 青野寛, 武田明雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1999
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Summary:我々は死体腎移植後に, 呼吸・循環不全, 肝障害をきたした症例を経験し管理に難渋したので報告する. 〔症例〕37歳. 女性. SLEによる腎不全にて21歳の時より透析を施行していた. 26歳の時, 死体腎移植を受けたが機能せず, 透析を継続していた. 〔経過〕平成10年7月死体腎移植術施行. 術後2日目の透析施行時, 血圧低下のため透析不能となり, 3日目に肺水腫のためICU入室となった. 入室後, 呼吸管理とともにCHDFを施行した. この結果, 低血圧は持続していたものの, 呼吸状態は徐々に改善を認め, 術後7日目にICU退室となった. しかし, 今回も病棟での透析管理は困難で, 術後9日目に呼吸不全のためICUに再入室となり, 人工呼吸管理, CHDFが再開された. このカテコラミンに抵抗する持続的な低血圧の原因であるが, 心エコーにて左室の壁運動に異常は認めなかった. 術後19日目には肝障害を認め, 血液培養でグラム陰性桿菌が検出され血小板の著明な低下も認めたため, 敗血症を疑いエンドトキシン吸着も施行したが無効であった. 術後25日目に免疫抑制剤のタクロリムス濃度がトラフ値で46ng/ml(正常値20ng/ml)と異常高値を示しており, このタクロリムスによる低血圧症が疑われ, 中止した. この後, 血圧は徐々に上昇, 肝機能も回復し, CHDFから離脱し, 透析へと移行可能となり, ICUから術後83日後に退室となった. その後全身状態の改善にともなって, 尿量は徐々に増加. 術後94日目に透析から離脱した. 〔考察〕本症例の低血圧の原因としては, 高濃度のタクロリムスによるものと考えられた. タクロリムスは経口投与の場合, 吸収は一定せず, 血中濃度に個人差がでやすい. また, 透析による排泄が殆ど期待できないため, 中毒量にならないように慎重に投与すること及び, 頻回の血中濃度測定が必要であると考えられた. 〔結語〕(1)死体腎移植後に急性循環不全をきたし, 呼吸不全・肝障害を合併し, 管理に難渋した1例を経験した. (2)循環不全の原因としてはタクロリムスの中毒が考えられた. (3)タクロリムスは吸収に個人差があるため, 頻回の血中濃度測定が必要であったと考えられた.
ISSN:0288-4348