全国国立大学附属病院輸血部会議 副作用登録委員会報告 輸血関連急性肺障害(TRALI)について

輸血関連急性肺障害(TRALI)は主として血液製剤中の抗顆粒球抗体や抗HLA抗体により急激な肺水腫を呈することが知られているが, clinical look-back investigationにより輸血副作用として報告されない症例が多数存在すること, また血液製剤中の抗顆粒球抗体により必ずしも肺水腫が明らかでなく呼吸困難に多彩な臨床症状を伴う症例が存在することが明らかになった. [対象, 方法]平成10年から平成13年に報告された中等~重症輸血副作用例で呼吸困難を認め, 原因製剤の検索が行われた症例27例を対象とし, 副作用登録委員会で解析を行った. [結果, 考察]1)非心原性肺水腫が7症...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 230
Main Authors 藤井康彦, 浅井隆善, 樋口清博, 佐藤伸二, 高松純樹, 山口一成, 高田昇, 池田和真, 布施一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.2003
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Summary:輸血関連急性肺障害(TRALI)は主として血液製剤中の抗顆粒球抗体や抗HLA抗体により急激な肺水腫を呈することが知られているが, clinical look-back investigationにより輸血副作用として報告されない症例が多数存在すること, また血液製剤中の抗顆粒球抗体により必ずしも肺水腫が明らかでなく呼吸困難に多彩な臨床症状を伴う症例が存在することが明らかになった. [対象, 方法]平成10年から平成13年に報告された中等~重症輸血副作用例で呼吸困難を認め, 原因製剤の検索が行われた症例27例を対象とし, 副作用登録委員会で解析を行った. [結果, 考察]1)非心原性肺水腫が7症例で確認され, 2例の副作用による死亡を認めた. これら7症例中2例で原因製剤(MAP2)から抗顆粒球抗体が検出され, 2例では患者血中からHLA抗体, 抗顆粒球抗体が検出された. 他の3例では抗体が検出されなかった. 2)最近, 抗HLA-classII抗体によりTRALIが発症することが報告されてたが, classII抗体の検査は行われていない. 今後の検査体制の課題と考えられる. 3)製剤の抗HLA抗体は全例で行われていたが, 抗顆粒球抗体の検索は44%(12/27)でしか行われていない. 今後の検査体制の改善が必要である. 4)抗顆粒球抗体を含む製剤によりTRALIを発症した後に抗体を含まない製剤により再度TRALIを発症した症例がRecurrent TRALIとして報告されたがこの症例に酷似した症例を2例認めており, 臨床的に重要と考えられる. 5)血液製剤中に抗HLA抗体を検出し同時に患者血中に血漿蛋白抗体がされる例があり臨床経過はこの二つの原因により修飾されると考えられる. 6)呼吸困難と発熱を認めた症例では血液製剤の細菌汚染との鑑別が必要であり, 製剤の細菌培養を同時に行う必要がある.
ISSN:0546-1448