当院で経験した前立腺がん死患者の臨床的検討

<はじめに>上都賀総合病院の診療圏では, 1991年1月より2000年12月までの10年間は前立腺がん検診がまだ行なわれていなかった. その10年間に, 我々は直接の死因が前立腺がんである症例を30例経験した. それらについて, 1.年齢, 2.悪性度, 3.診断時の前立腺特異抗原(PSA), 4.病期, 5.ホルモン療法後の再燃の有無, 6.モルヒネ使用の有無, 7.死亡までの期間などを後方視的に検討した. <結果>診断時の年齢は, 49から89才, 平均70.2才, 中間値71才であった. 悪性度は, 中分化腺がん11例, 低分化腺がん17例, 不明2例であった....

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 374
Main Authors 高原正信, 大井利夫, 金水英俊, 田代亜彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 01.09.2005
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ISSN0468-2513

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Summary:<はじめに>上都賀総合病院の診療圏では, 1991年1月より2000年12月までの10年間は前立腺がん検診がまだ行なわれていなかった. その10年間に, 我々は直接の死因が前立腺がんである症例を30例経験した. それらについて, 1.年齢, 2.悪性度, 3.診断時の前立腺特異抗原(PSA), 4.病期, 5.ホルモン療法後の再燃の有無, 6.モルヒネ使用の有無, 7.死亡までの期間などを後方視的に検討した. <結果>診断時の年齢は, 49から89才, 平均70.2才, 中間値71才であった. 悪性度は, 中分化腺がん11例, 低分化腺がん17例, 不明2例であった. 前立腺特異抗原(PSA)は18.9から6950ng/ml, 平均900ng/ml, 中間値100ng/mlであった. 病期は, A2 1例, C 3例, D1(前立腺全摘出術施行)2例, D2(骨転移, 肺転移, 遠隔リンパ転移, 皮膚転移など)23例であった. ホルモン療法後に再燃した症例が22例(73.3%)で, 再燃までの期間は6から31か月, 平均13.3か月, 中間値12か月であった. 疼痛に対して, モルヒネを使用したのが25例(83.3%)であった. 全症例において, 診断から死亡までの期間は, 4から85か月(7年1か月), 平均2年9か月, 中間値2年7か月であった. 再燃した症例では, 再燃してから4から60か月(5年)で死亡した. その期間は平均2年1か月, 中間値2年であった. 診断から死亡までの短い症例では, DICの合併がみられた. 49才と89才の症例は, 2例とも認知障害があり, 広範囲の骨転移および, 強度の貧血がみられた. 緩和ケアとして, 1.骨痛に対して放射線療法, 2.ステロイド内服, 点滴, 3.モルヒネの内服, 静脈注射および持続皮下注射, 4.ライフレビューなどを行なった. <考察> 1.当院の前立腺がん死の患者の内, ホルモン療法に反応した症例は, ほぼ1年で再燃しその後約2年で死亡した. 2.ホルモン療法に反応しない時の予後は不良で, ほぼ1年以内であった. 3.終末期の疼痛には, モルヒネが有用であった. 4.再燃時には, 骨痛に対して放射線療法, デカドロン内服, エストラサイト, エトポシド, シスプラチン少量点滴などの化学療法を施行してきた. 5.死亡例の検討およびケアに対する反省をする事により, 今後は前立腺がん患者のターミナルケア, 緩和ケアをより一層充実しなければならないと考える.
ISSN:0468-2513