医療制度改革を踏まえた今後の地域歯科保健の方向

わが国では, 世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきたが, 近年, 急速な少子高齢化, 経済の低成長への移行, 国民生活や意識の変化など大きな環境変化に直面しており, 社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため, 社会保障制度全般について, 構造的な見直しを行う必要に迫られてきている. 特に医療制度については, 昭和36年から誰もが安心して医療を受けることができる国民皆保険制度を実現して, これを維持してきたところであるが, 今後もこの国民皆保険制度を堅持していくために, 医療費について過度の増大を招かないよう, 経済政策と均衡がとれたものとし, さらに, 国民の医療に対...

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Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 58; no. 1; p. 62
Main Author 小椋正之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔衛生学会 30.01.2008
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Summary:わが国では, 世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきたが, 近年, 急速な少子高齢化, 経済の低成長への移行, 国民生活や意識の変化など大きな環境変化に直面しており, 社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため, 社会保障制度全般について, 構造的な見直しを行う必要に迫られてきている. 特に医療制度については, 昭和36年から誰もが安心して医療を受けることができる国民皆保険制度を実現して, これを維持してきたところであるが, 今後もこの国民皆保険制度を堅持していくために, 医療費について過度の増大を招かないよう, 経済政策と均衡がとれたものとし, さらに, 国民の医療に対する安心・信頼を確保し, 質の高い医療サービスが適切に提供される体制を確立していかなければならない. 厚生労働省においては, 平成18年1月に「医療制度改革大綱による改革の基本的考え方」を示すとともに, 医療制度改革を推し進めてきたところであり, (1)医療提供体制, 医療安全関係, (2)健康・予防関係, (3)介護療養病床の見直し及び介護報酬関係, (4)医療費適正化, 医療保険制度体系関係などにわたった見直しを行って, 各都道府県に種々の計画作成のためのガイドラインを示すなど改革を推進してきているところである. 一方, 都道府県においては, これらのガイドラインに基づき, 平成20年度から新しい(1)医療計画, (2)健康増進計画, (3)介護保険事業支援計画, (4)医療費適正化計画を策定することとなっており, 平成19年度中, 各都道府県では, これらの計画を策定するための作業に取りかかっているところであると伝え聞いている. したがって, 平成19年度中に作成されるであろう, これらの計画の中に歯科に関する適切な文言を適切な箇所に記載していくことが喫緊, かつ, 重要な課題となっており, この結果いかんによって, 今後の歯科保健医療の動向が左右される可能性があると言っても過言ではないであろう. 今回の日本口腔衛生学会甲信越北陸地方会においては, このような医療制度改革などを含めて, 最近の歯科保健医療の動向などについて概説する.
ISSN:0023-2831