頚部回旋による食道入口部の圧変化

【はじめに】頚部回旋は, 横向き嚥下などとして嚥下障害の臨床でよく用いられている. 今回, 嚥下障害患者および健常者で, 頚部回旋による食道入口部静止圧の変化について検討した. 【対象】1996年6月から1999年7月までに検査の同意を得て嚥下圧測定を行った仮性球麻痺患者11名(男性9名女性2名, 71±7歳), 球麻痺患者19名(男性16名女性3名, 60±13歳), 及び健常者5名(男性2名女性371, 34±10歳)を対象とした. 【方法】はじめに圧センサーカテーテル(以下カテ)を経鼻的に食道内に挿入し, 左右どちらの食道人口部を通過しているか確認した. その後引き抜きながら, 頚部正中...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 3; no. 2; p. 83
Main Authors 柴本勇, 小島千枝子, 北條京子, 新居素子, 前田広士, 藤島一郎, 大熊るり, 武原格, 水口文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 01.12.1999
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ISSN1343-8441

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Summary:【はじめに】頚部回旋は, 横向き嚥下などとして嚥下障害の臨床でよく用いられている. 今回, 嚥下障害患者および健常者で, 頚部回旋による食道入口部静止圧の変化について検討した. 【対象】1996年6月から1999年7月までに検査の同意を得て嚥下圧測定を行った仮性球麻痺患者11名(男性9名女性2名, 71±7歳), 球麻痺患者19名(男性16名女性3名, 60±13歳), 及び健常者5名(男性2名女性371, 34±10歳)を対象とした. 【方法】はじめに圧センサーカテーテル(以下カテ)を経鼻的に食道内に挿入し, 左右どちらの食道人口部を通過しているか確認した. その後引き抜きながら, 頚部正中位および回旋位での食道入口部静止圧を測定した. 【結果】仮性球麻痺では正中位67.0±23.2mmHg, カテと反対側への回旋36.9±9.4mmHg, 同側への回旋58.0±11.2mmHgであった. 球麻痺患側ではそれぞれ56.1±19.5mmHg, 41.2±23.5mmHg, 73.9±36.6mmHg, 球麻痺健側では78.2±43.7mmHg, 39.1±22.7mmHg, 80.1±33.8mmHgであった. 健常者ではそれぞれ60.0±8.7mmHg, 36.3±13.9mmHg, 55.2±18.3mmHgであった. 仮性球麻痺・球麻痺・健常者共に, カテと反対側への回旋で圧が有意に低下した(p<0.05). 加えて, 頚部正中位・回旋位とも各群でそれぞれの圧に有意差はなかった. 【考察】頚部回旋による反対側の食道入口部静止圧の低下は, 横向き嚥下の臨床的効果に関与している可能性があると考えられた. また今回, 仮性球麻痺・球麻痺・健常者で圧に有意な差がなかったことから, 食道入口部静止圧は病態によらず解剖学的構造により規定されている可能性が考えられた.
ISSN:1343-8441