手指失認を呈した3症例の質的検討

「目的」手指失認を呈する脳卒中患者に対して検査を行いその発症メカニズムについて検討する. 「対象と方法」脳卒中患者3名に対して, 指された指を被検者が呼称する言語性検査, 口頭で指示された指を被検者が絵の手を指す非言語性検査を行った. 「結果」3症例とも物品呼称の障害はなかった. 症例1では非口語性検査では7割正解するが, 指された指を呼称する占語性検査では左指で5割, 右指で3割と低下し左右差を認めた. さらに客観的な指標として, 手指への電気刺激を用いて左右別々に非言語性検査の手指弁別課題を行い, 頭皮上からp300を記録したが, 左手指刺激ではp300を認め, 右手指刺激では認めず左右差...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 34; no. 12; p. 928
Main Authors 又吉達, 衛藤誠二, 川津学, 川平和美, 田中信行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1997
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Summary:「目的」手指失認を呈する脳卒中患者に対して検査を行いその発症メカニズムについて検討する. 「対象と方法」脳卒中患者3名に対して, 指された指を被検者が呼称する言語性検査, 口頭で指示された指を被検者が絵の手を指す非言語性検査を行った. 「結果」3症例とも物品呼称の障害はなかった. 症例1では非口語性検査では7割正解するが, 指された指を呼称する占語性検査では左指で5割, 右指で3割と低下し左右差を認めた. さらに客観的な指標として, 手指への電気刺激を用いて左右別々に非言語性検査の手指弁別課題を行い, 頭皮上からp300を記録したが, 左手指刺激ではp300を認め, 右手指刺激では認めず左右差があった. 症例2では言語性, 非言語性共に7割の正解であった. 症例3は脳幹部出血の患者で, 口頭で指示された指を絵の手で指す非言語性検査は全問正解であったが, 指された指を呼称する言語性検査では4割の正解であった. 「考察」症例1,2では指に特異的な喚語障害と, 身体図式の障害の両方が関与しており, 症例3では指に特異的な喚語障害が原因と考えた. 手指失認には指に特異的な喚語障害と, 身体図式そのものの障害が関与しており, 症例により両者の関与の度合が異なった.
ISSN:0034-351X