骨髄移植直後のG-CSF投与による血液幹細胞の増加作用

〔目的〕骨髄移植後の患者には, 造血の回復を早めるためにしばしばG-CSFが投与される. しかし, その投与開始をいつにするかについては定説がない. 今回我々は, 骨髄移植直後におけるG-CSF投与の造血幹細胞への効果を解析するために, マウスの同系骨髄移植の系を用いて検討を行った. 〔方法〕放射線照射を受けたメスBDF1マウス(レシピエントマウス)に, オス大腿骨由来の骨髄細胞(5-FU処理したものとしないものについて検討した. )を同系移植し, 移植当日より5日間G-CSFを投与した(2μg/mouse/day). GM-CFCの評価はメチルセルロース中でのコロニー形成により行われた. ま...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 981
Main Authors 田中智之, 平井久丸, 三浦恭定, 柴田洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1994
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ISSN0546-1448

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Summary:〔目的〕骨髄移植後の患者には, 造血の回復を早めるためにしばしばG-CSFが投与される. しかし, その投与開始をいつにするかについては定説がない. 今回我々は, 骨髄移植直後におけるG-CSF投与の造血幹細胞への効果を解析するために, マウスの同系骨髄移植の系を用いて検討を行った. 〔方法〕放射線照射を受けたメスBDF1マウス(レシピエントマウス)に, オス大腿骨由来の骨髄細胞(5-FU処理したものとしないものについて検討した. )を同系移植し, 移植当日より5日間G-CSFを投与した(2μg/mouse/day). GM-CFCの評価はメチルセルロース中でのコロニー形成により行われた. また, CFU-Sの評価は, レシピエントマウスの骨髄を別のメスマウスに2次移植することにより行われた. この際, 脾コロニーの大部分が最初のオスマウスに由来することが, PCR法によるY染色体特異配列の検出によって確かめられた. 〔結果〕移植後12日目に検討した結果, G-CSFを投与されたマウスの骨髄中では, G-CSFを投与されなかったマウスに比して, 有意に有核細胞数, GM-CFC, CFU-Sが増加を示した. また, GMコロニーのサイズはG-CSF投与群の方が小さかった. さらに, G-CSF投与群では, レシピエントマウスにおいて形成された脾コロニーのうち, 多系統性のコロニーの割合が減少していた. 〔考察〕マウスでは, 骨髄移植直後におけるG-CSF投与が, 造血幹細胞を増加させるとともに分化を促進させることが確かめられた. 臨床的にも同様の作用が示されれば, 骨髄移植直後におけるG-CSF投与は, 造血の回復を早めるために有用と考えられる.
ISSN:0546-1448