術中心停止2症例における頭部CTと血清NSEの相違

他院で術中心停止をきたした蘇生後脳症症例において, 神経細胞の逸脱酵素である血清NSE(RIA法, 正常範囲<10ng/ml, 以下NSE)の推移と頭部CTについて検討したので報告する. <症例1>48歳女性. 脊椎麻酔下で子宮全摘術開始時に鎮静剤の過量投与によって心停止をきたした. 100分後に開胸心マッサージにより心拍再開したが, その後脳死にいたった. 搬入時のCTでは高度脳浮腫を呈していたが, NSEは正常範囲内であった. 12時間後, 大脳の灰白質と脳幹部を中心に広範なLDAを呈し, この時点のNSEは357ng/mlと急上昇していた. その後, 脳嵌頓ヘルニアと二...

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Published in蘇生 Vol. 12; pp. 59 - 60
Main Authors 今泉均, 樽見葉子, 坂野晶司, 伊藤靖, 氏家良人, 金子正光, 並木昭義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1994
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Summary:他院で術中心停止をきたした蘇生後脳症症例において, 神経細胞の逸脱酵素である血清NSE(RIA法, 正常範囲<10ng/ml, 以下NSE)の推移と頭部CTについて検討したので報告する. <症例1>48歳女性. 脊椎麻酔下で子宮全摘術開始時に鎮静剤の過量投与によって心停止をきたした. 100分後に開胸心マッサージにより心拍再開したが, その後脳死にいたった. 搬入時のCTでは高度脳浮腫を呈していたが, NSEは正常範囲内であった. 12時間後, 大脳の灰白質と脳幹部を中心に広範なLDAを呈し, この時点のNSEは357ng/mlと急上昇していた. その後, 脳嵌頓ヘルニアと二次性のくも膜下出血をきたし, 脳死判定数日後には上昇していたNSEは急激に低下した. <症例2>59歳男性. 全身麻酔下で慢性副鼻腔炎手術を施行開始直前に気道トラブルによって15分後に心停止をきたした. 15分後に再挿管を含めた蘇生法によって心拍が再開したが, 植物状態にいたった. 蘇生20時間後のCTでは大脳の白質の広範なLDAがみられ, NSEは224ng/mlと高度に上昇していた. NSEは第2病日にピークを迎え, その後急激に減少し, 10日後の頭部CTでは著明な脳萎縮を呈した. <考察>両症例とも広範な神経細胞壊死を示す著明なNSEの増加がみられたが, その後のNSEの推移は症例1では脳死判定後の第5病日以降に低下し, 症例2では第3病日以降急激に低下した. この変化をCT, 臨床症状から推定すると, 症例1では脳死によってNSEの洗い出しが行われなくなって低下したのに対して, 症例2では神経細胞の成熟壊死が終了したため低下したと考えられた. <結語>血清NSEは, 壊死した神経細胞の絶対量を反映すると考えられた. NSEが50ng/ml以上の高値の場合, 脳死にいたるか, 植物状態になるかの鑑別は, NSEの絶対量では困難で, NSEの推移をみることによって鑑別が可能である.
ISSN:0288-4348