本院における多臓器不全患者の予後規定因子の検討

1987年4月から1991年6月の間に本院救急部集中治療部に入室した多臓器不全患者(MOF患者)の入室中の血液生化学検査, 血液ガス所見をretrospectiveに調査し, 患者の予後を規定すると思われる因子について検討したのでこれを報告する. <対象および方法>上記の期間中に本院救急部集中治療部に入室したMOF患者14例を対象とした. 症例を生存群と死亡群に分け, それぞれの障害臓器, 経過中の血液生化学データ, oxygenation indexの最悪値を調査した. <結果>14症例中生存群は8例, 死亡群は6例であった. 全症例において人工呼吸管理を要する肺障害...

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Published in蘇生 Vol. 10; pp. 69 - 70
Main Authors 佐藤一範, 本多忠幸, 多賀紀一郎, 伝田定平, 下地恒毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1992
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ISSN0288-4348

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Summary:1987年4月から1991年6月の間に本院救急部集中治療部に入室した多臓器不全患者(MOF患者)の入室中の血液生化学検査, 血液ガス所見をretrospectiveに調査し, 患者の予後を規定すると思われる因子について検討したのでこれを報告する. <対象および方法>上記の期間中に本院救急部集中治療部に入室したMOF患者14例を対象とした. 症例を生存群と死亡群に分け, それぞれの障害臓器, 経過中の血液生化学データ, oxygenation indexの最悪値を調査した. <結果>14症例中生存群は8例, 死亡群は6例であった. 全症例において人工呼吸管理を要する肺障害が認められた. oxygenation indexの最悪値は生存群138.7±37.2mmHg, 死亡群101.3±35.1 mmHgと有意差はなかった. 腎障害は8例に認められ, 全例に血液透析が施行された. このうち肝障害合併の6例が死亡した. 血液透析によってBUN, Creはよくコントロールされ, 生存群と死亡群の間に有意の差はなかった. 肝障害は12例に認められた. 血漿交換を要した症例は7例であり, このうち6例が死亡した. 経過中のGOT, GPTの最悪値はそれぞれ生存群753±215 IU/L, 813±198 IU/L, 死亡群1520±481 IU/L, 1618±492 IU/Lであり, 有意の差はなかった. TB値の最悪値は, 生存群8.7±1.0mg/dl, 死亡群21.3±3.1mg/dlで有意に死亡群で高値であった(p<0.05). <考察およびまとめ>本結果より, 積極的な血液浄化法の導入にもかかわらずMOF患者の予後の規定因子としてTB値が重要であることおよびより優れた肝補助手段の導入の必要性が示唆された.
ISSN:0288-4348