低酸素性脳障害5例の治療経験

われわれは昭和57年1月から昭和59年12月までの3年間に低酸素性脳障害患者35例を経験し, このうちCO中毒を除く5例について検討した. ICU入室時に行うことは, 意識状態の判定, 神経学的検査, 血液ガス・電解質などの測定, 詳細なアナムーゼの聴取であり, 脳波はできるだけ早期に検査する. 低酸素性脳障害の病態は脳へのエネルギー供給不全からくる脳浮腫と考えられ, われわれは脳浮腫軽減療法として, 仙台カクテル(マニトール300ml, デカドロン20mg, ビタミンE200mg)を4~6ml/kg, 1日1~2回投与し, バルビツレート療法(ラボナール(R)2mg/kg/min)を併用する...

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Published in蘇生 Vol. 4; pp. 87 - 88
Main Authors 吉成道夫, 星邦彦, 加藤正人, 小野勝彦, 天羽敬祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.03.1986
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Summary:われわれは昭和57年1月から昭和59年12月までの3年間に低酸素性脳障害患者35例を経験し, このうちCO中毒を除く5例について検討した. ICU入室時に行うことは, 意識状態の判定, 神経学的検査, 血液ガス・電解質などの測定, 詳細なアナムーゼの聴取であり, 脳波はできるだけ早期に検査する. 低酸素性脳障害の病態は脳へのエネルギー供給不全からくる脳浮腫と考えられ, われわれは脳浮腫軽減療法として, 仙台カクテル(マニトール300ml, デカドロン20mg, ビタミンE200mg)を4~6ml/kg, 1日1~2回投与し, バルビツレート療法(ラボナール(R)2mg/kg/min)を併用することもある. また同時に高圧酸素療法(2.5~3.0 ATA, 1時間, 1日1~2回)を, 脳に酸素を供給し, 酸化的燐酸化反応を回復させる目的で行う. その他呼吸・循環・感染・栄養管理も平行して行う. 低酸素性脳障害になった原因は, 淡水による溺水が2例, チューブトラブルによるHypoxiaが2例, 薬物ショックが1例であった. 合併症として肺水腫・低体温・高体温が4例に認められた. 意識を回復したのは3例, 植物状態に陥ったのは2例であった. 入室時の意識レベルは全例100点以上で, 300点を示した3例のうち2例は意識が回復しなかった. 植物状態に陥った1例は来院時塩基過剰が-20mEq/リットル以上と著しい代謝性アシドーシスを示した. 治療は仙台カクテルと高圧酸素療法を全例に, バルビツレート療法を4例に行った. 回復例では, 開眼までの時間は38時間以内, 応答までは41時間以内であり, 脳波は10日後に正常化した. 植物状態に陥った例では脳波は不変か増悪傾向を示した. 以上より低酸素性脳障害患者に対し, 脳浮腫軽減療法と高圧酸素療法の併用は有効な治療法と考えられる.
ISSN:0288-4348