脱血によるラット脳c-Fos発現に対する輸液補正の効果
Early immediate geneの一つであるc-fosの産物c-Fos蛋白は, 様々な病・生理学的刺激によって脊髄および中枢神経細胞に発現誘導されることが知られている. 我々が日常遭遇する出血も病的刺激であり, 脱血による循環血液量減少が, ラット脳の視索上核, 傍室核などにc-Fosを発現すると報告されている. 今回我々は, 脱血による循環血液量減少と輸液により循環血液量を補正した場合についてラット脳のc-Fos発現を検討したので報告する. 〔方法〕Wistar系雄性ラット(300g前後)を用い, ベントバルビタール麻酔下に両側大腿動脈にカニュレーションし, 動脈圧モニターおよび脱血...
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Published in | 蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 213 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.09.1999
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | Early immediate geneの一つであるc-fosの産物c-Fos蛋白は, 様々な病・生理学的刺激によって脊髄および中枢神経細胞に発現誘導されることが知られている. 我々が日常遭遇する出血も病的刺激であり, 脱血による循環血液量減少が, ラット脳の視索上核, 傍室核などにc-Fosを発現すると報告されている. 今回我々は, 脱血による循環血液量減少と輸液により循環血液量を補正した場合についてラット脳のc-Fos発現を検討したので報告する. 〔方法〕Wistar系雄性ラット(300g前後)を用い, ベントバルビタール麻酔下に両側大腿動脈にカニュレーションし, 動脈圧モニターおよび脱血・輸液に用いた. 脱血群は脱血を行い平均血圧を40mmHg以下に, 希釈群は初期ヘマトクリット値の50%希釈を目標に脱血と同時に乳酸リンゲル液を輸液し, 初期平均血圧の90%以下にならないように維持し, 1時間後に脳の灌流固定を行った. 脳スライス標本を作製し, 抗c-Fos抗体を用いた免疫組織染色(ABC法)を行い両群を比較した. 〔結果〕1)脱血量は脱血群8.1±1.1ml, 希釈群11.7±1.5mlで, 輸液量は39.8±14.3であった. ヘマトクリット値は脱血群43±1から28±4%, 希釈群45±3から20±4%に減少した. 2)c-Fos陽性細胞は帯状皮質, 梨状皮質, 視索上核, 傍室核などに発現したが両群とも同程度であった. 〔考案〕視索上核や傍室核にある神経細胞の多くは神経ホルモンであるバゾプレシンやオキシトシンを含有するといわれる. 脱血による循環血液量減少によりこれらの核にc-Fos陽性細胞が発現したことは浸透圧あるいは圧受容体刺激が加わったためと考えられる. しかし, 輸液により循環血液量を補正してもc-Fos陽性細胞の発現は変わらず, 帯状皮質, 梨状皮質など圧受容体と関係しない部位にも発現が認められており今後の検討か必要である. 〔結語〕脱血による循環血液量減少によりラット脳にc-Fos発現が認められたが, 輸液により循環血液量を補正しても同様であった. |
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ISSN: | 0288-4348 |