筋硬度計の開発とその応用

【目的】筋の硬さを客観的かつ定量的に測定する方法を開発し, 肩僧帽筋の硬さ測定に応用した. 【方法】測定子を体表面に垂直に押しつけた時の変位x〔cm〕と圧力y〔gf/平方センチメートル〕を求め, 応力分布が放射状になることを利用して測定した. xとyの関係をy=α_1 exp(βy)-α_2 と近似した. 硬さdy/dx (S)は, S=βy+α_2 βとなる. 圧力がy時の硬さをSy 〔gf/立方キロメートル〕で表した. 無負荷時(y=0)の硬さはS_0 =α_2 βとなる. 【結果と考察】生体組織の硬さはβとS_0 の大小から4型に分類できるが, 今回はS_0 にβを加味したS_200 を...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 27; no. 7; p. 648
Main Authors 堀川宗之, 海老原進一郎, 秋山実
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.12.1990
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ISSN0034-351X

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Summary:【目的】筋の硬さを客観的かつ定量的に測定する方法を開発し, 肩僧帽筋の硬さ測定に応用した. 【方法】測定子を体表面に垂直に押しつけた時の変位x〔cm〕と圧力y〔gf/平方センチメートル〕を求め, 応力分布が放射状になることを利用して測定した. xとyの関係をy=α_1 exp(βy)-α_2 と近似した. 硬さdy/dx (S)は, S=βy+α_2 βとなる. 圧力がy時の硬さをSy 〔gf/立方キロメートル〕で表した. 無負荷時(y=0)の硬さはS_0 =α_2 βとなる. 【結果と考察】生体組織の硬さはβとS_0 の大小から4型に分類できるが, 今回はS_0 にβを加味したS_200 を用いて検討した. 天然ゴムによる模擬実験の結果, 測定部位の厚さがある値以上であれば, S_0 , β, S_200 はほぼ一定値を示すことが示唆された. S_200 とマッサージ師の定性的評価は良い相関を示した. 机上作業の成人男女149名を対象として, 椅坐位時の肩僧帽筋のS_200 を測定した. 利き腕の方が有意に硬い結果が得られた. 男女間では, 利き腕に関係なく女性の方が有意に硬かった. 全身マッサージ前後の肩僧帽筋の硬さをS_200 を指標に用いて比較した. 少数例ではあるがマッサージ後, 筋の硬さはむしろ増加することが示された. 【結論】本法は筋の硬さを客観的に評価する方法として多分野への応用が期待できる. 質問 大阪労災病院川村次郎:皮下脂肪の影響をどうして除去されましたか. また皮下脂肪の多少によって誤差を生じませんでしたか. 答 堀川宗之:皮下組織が圧縮された後の圧力歪関係の微分値を求めているので余り影響ない. 肩僧帽筋は皮下脂肪が比較的少ない. 質問 鹿教湯病院藤田勉(座長):筋硬度が利き腕が固いとすれば男女差で女性が硬いという結果とマッサージ後硬度が増すことはどう説明したら良いか. 答 堀川宗之:(1)今回のデータは40~50歳の女性が対象なので断定的なことはいえない. 現在若年層を含めて検討中である. (2)マッサージ中筋を収縮させることも一因と考えられるが, さらに検討を要する. 答 堀川宗之:生体は粘弾性体なので押圧速度は重要である. およそ500 gf/平方センチメートル/sで押圧し再現性も良い. 答 堀川宗之:再現性は変動係数で10%以内であり, 臨床評価に十分である.
ISSN:0034-351X