X線撮影における“Entrance Surface Dose”の意義と評価法
International Commission on Radiological Protection(ICRP)の1990年勧告の概念を放射線防護体制に反映させる具体的技術基準として, 1994年, International Atomic Energy Agencyから, Basic Safety Standards No. 9(BSS-9)が刊行された. この技術基準に基づくわが国の放射線防護体制の改定により, 患者の被曝線量測定・記録が義務づけられる. X線撮影では, 標準的体格の患者の, 入射面皮膚線量K_s が測定対象の予定である. 表面線量, 半価層, 管電圧, 照射野面積の情報...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 38; no. 2; pp. 132 - 133 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
30.06.1998
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ISSN | 0389-9705 |
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Summary: | International Commission on Radiological Protection(ICRP)の1990年勧告の概念を放射線防護体制に反映させる具体的技術基準として, 1994年, International Atomic Energy Agencyから, Basic Safety Standards No. 9(BSS-9)が刊行された. この技術基準に基づくわが国の放射線防護体制の改定により, 患者の被曝線量測定・記録が義務づけられる. X線撮影では, 標準的体格の患者の, 入射面皮膚線量K_s が測定対象の予定である. 表面線量, 半価層, 管電圧, 照射野面積の情報があれば, BSS-9が要求する様に, 後日, 必要に応じて実効線量を推定可能である. 評価法としては, 実測による方法と皮膚表面位置における空中照射線量の測定値Q_p に後方散乱係数BSFを乗じて評価する方法がある. 入射表面近傍の後方散乱X線の線量は表面からの距離により, 急峻に減衰する. このため, 実測では線量計と表面の密着を保つ事が困難であり, 誤差が大きく, 患者個人の被曝線量を撮影毎に測定する場合などを除いては, 実測は推奨できない. 現場での評価には, 後者の方法が, 成書などでも推奨されている. この方法では, 撮影条件におけるBSFの値が推定できる事が前提である. 演者は, 可能な限り広範な撮影条件に対するBSFを計算で推定するアルゴリズムを開発した. Monte Carlo計算で求めたBSFデータを基に, 照射野, 半価層, 管電圧, 照射野形状, Cone立体角を引数とするBSFの近似関数を作った. 通常の撮影条件に対する近似誤差は0.5%未満である. 半価層と管電圧の値には, 質的保証プログラムに基づいて測定した値を使う. この方法により, 単純な空中照射線量の測定値から, 入射面皮膚線量はK_s (mGy)=0.869・BSF・Q_p (R)と推定され, その推定誤差は曝射の再現性も含めて, 3%程度となる. |
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ISSN: | 0389-9705 |