尿中馬尿酸, フェノール, クレゾールのバックグラウンドレベルに影響を与える諸因子

近年の職場環境の改善に伴い, 労働者が有機溶剤等の有害物質に曝露される量(濃度)が低下してきた. これに伴い, 有機溶剤代謝物の尿中排泄量も低下してきており, 馬尿酸, フェノール, クレゾールのように非曝露者の尿からも認められる代謝物では, 曝露の評価を行なうことが難しくなってきている. このような状況ではバックグラウンドレベルについてより詳しく知ることが, 生物学的モニタリングの有効利用に重要である. そこで, 喫煙, 飲酒, 食事等の生活習慣や薬物代謝酵素の遺伝子多型が生物学的モニタリング指標のバックグラウンドレベルにどのような影響を与えているか検討する. 調査対象者は351名の男子大学...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 38; no. 2; p. 104
Main Authors 川本俊弘, 古賀実, 児玉泰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 20.03.1996
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ISSN1341-0725

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Summary:近年の職場環境の改善に伴い, 労働者が有機溶剤等の有害物質に曝露される量(濃度)が低下してきた. これに伴い, 有機溶剤代謝物の尿中排泄量も低下してきており, 馬尿酸, フェノール, クレゾールのように非曝露者の尿からも認められる代謝物では, 曝露の評価を行なうことが難しくなってきている. このような状況ではバックグラウンドレベルについてより詳しく知ることが, 生物学的モニタリングの有効利用に重要である. そこで, 喫煙, 飲酒, 食事等の生活習慣や薬物代謝酵素の遺伝子多型が生物学的モニタリング指標のバックグラウンドレベルにどのような影響を与えているか検討する. 調査対象者は351名の男子大学生および工場労働者(平均年齢38.6歳, (19~71歳))で有害業務に従事していない人とした. 尿は午前中の随時尿とし, 馬尿酸, クレアチニン, フェノール, o-, p-クレゾールを測定した. 遺伝因子としては, DNA多型が認められている薬物代謝酵素のなかで, アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2), N-アセルトランスフェラーゼ2(NAT2), チトクロムP-4501A1(CYP1A1), グルタチオン-S-トランスフェラーゼM1(GSTM1)およびチトクロムP-4502E1(CYP2E1)の5つについてPCR法を利用し, 遺伝子型の判定を行なった. 生活習慣としては, 喫煙, 飲酒習慣, コーヒーおよび紅茶の摂取回数, 食事のバランス, 油っぽい食事の好き嫌い, 味付け, 菓子や果物の摂取について質問票を用いて調査をした. 以上の喫煙, 飲酒, 食事等の生活習慣や薬物代謝酵素の遺伝子多型が尿中馬尿酸, フェノール, o-, p-クレゾール濃度に及ぼす影響についてステップワイズ重回帰分析を行ったところ, 尿中フェノール濃度はコーヒーおよび紅茶の摂取回数が多くなるにつれて低くなった. また, 尿中o-クレゾール濃度は喫煙者の方が非喫煙者よりも高かった.
ISSN:1341-0725