温熱および寒冷刺激と骨内血行動態

骨関節疾患においても阻血性疾患は難治性であり, よりよい治療法の確立が望まれている. そこで今回われわれは物理療法に注目し研究を行った. 【材料および方法】ウィスター系ラットを28匹用い, ネンブタールで全身麻酔を施し, 測定は脛骨近位端で行い, 物理療法は赤外線と氷のうで5分間行った. 血流測定には水素クリアランス法を用い, 酸素分圧の測定は温度自動補償機能付きポーラログラフィー型センサーを作製し用いた. 【結果】温熱療法により, 骨内血流量は11.8 ml/分/100 gから21.3 ml/分/100 gへと有意に約80%上昇し, 骨内酸素分圧は20.4 mmHgから23.3 mmHgへと...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 32; no. 11; p. 802
Main Authors 北潔, 石川斉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1995
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Summary:骨関節疾患においても阻血性疾患は難治性であり, よりよい治療法の確立が望まれている. そこで今回われわれは物理療法に注目し研究を行った. 【材料および方法】ウィスター系ラットを28匹用い, ネンブタールで全身麻酔を施し, 測定は脛骨近位端で行い, 物理療法は赤外線と氷のうで5分間行った. 血流測定には水素クリアランス法を用い, 酸素分圧の測定は温度自動補償機能付きポーラログラフィー型センサーを作製し用いた. 【結果】温熱療法により, 骨内血流量は11.8 ml/分/100 gから21.3 ml/分/100 gへと有意に約80%上昇し, 骨内酸素分圧は20.4 mmHgから23.3 mmHgへと有意に約15%上昇することがわかった. 約30分間, この効果は持続していた. 以上2つの結果から, 温熱療法は酸素分圧の上昇をともなった血流増加をもたらしており, 組織の活性に有効である可能性が示唆された. 寒冷刺激では, 酸素分圧の上昇を認めたのは11匹中6匹にすぎず, 統計学的な有意差は得られなかった. 典型例では, 寒冷刺激中わずかの上昇を認めた後, 刺激後約5分でリバウンド現象と思われる酸素分圧の上昇があり, 効果は約15分間あるものと推測された. 【考察および結語】今までに行ったわれわれの実験結果では, 加齢により血流は約40%低下し, ステロイドにより約70%減少することを確認している. 今回行った温熱療法では, 酸素分圧の上昇をともなった約80%の血流増加が見込まれており, 温熱療法は阻血性疾患に対しても代償可能な血流増加を期待しうることがわかった.
ISSN:0034-351X