失語症患者の職場復帰状況

1984年8月~1990年10月の期間に当科へ入院した59歳以下の失語症患者について職場復帰の状況を検討した. 対象は29例で, うち男性26例, 女性3例であり, 平均年齢は50.8±6.7歳であった. このうち有職は27例で, 内訳は被雇用者20例, 自営業者5例, 農業2例であった. 失語症の重症度と職場復帰率の関係は重度では7例中1例(14.3%), 中等度8例中4例(50.0%), 軽度は12例全例(100%)が職場復帰していた. なお重度失語では7例中6例に強い麻痺を合併していた. 被雇用者20例の職場復帰については, 退職者8例(40%), 転職者5例(25%), 現職復帰7例(...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 28; no. 12; p. 1029
Main Authors 深田倍行, 斉藤潤, 田中弘道, 古和久典, 木佐俊郎, 原順子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.12.1991
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Summary:1984年8月~1990年10月の期間に当科へ入院した59歳以下の失語症患者について職場復帰の状況を検討した. 対象は29例で, うち男性26例, 女性3例であり, 平均年齢は50.8±6.7歳であった. このうち有職は27例で, 内訳は被雇用者20例, 自営業者5例, 農業2例であった. 失語症の重症度と職場復帰率の関係は重度では7例中1例(14.3%), 中等度8例中4例(50.0%), 軽度は12例全例(100%)が職場復帰していた. なお重度失語では7例中6例に強い麻痺を合併していた. 被雇用者20例の職場復帰については, 退職者8例(40%), 転職者5例(25%), 現職復帰7例(35%)であった. 退職者のうち4例は定年退職に移行したもので, 4例が勤務不可能と考えられ退職した. 要因としては言語障害のみならず, 精神的不安定さ, 労働意欲の欠如, 日常生活への不適応など精神的問題や麻痺による運動障害の合併などが考えられた. ただこのうち2例は肢体不自由厚生施設入所によって再就職の可能性を検討中である. 重度運動型失語例の復職経過について報告したが, 本人の復職への強い意欲, ワープロ利用などの工夫, 身分保障の確立, 職場内での理解と教育的配慮, 適切な職場内配置転換などの重要性が考えられた. 失語症者の社会復帰に対し, 地域に即した方法で関係者の根気強い努力が必要である. <質疑応答> 前島伸一郎(藤田学園保健衛生大):社会復帰には休職期間が最も関係すると思います. 重度の失語症の患者では当然入院期間なども長いと考えられます. 復帰できない症例では, 重症の失語のためなのか, 入院が長いためなのかということをお教えいただきたい. 土肥信之(藤田学園保健衛生大):失語症患者の車の運転についてどのように指導されていますか.
ISSN:0034-351X