香川医科大学附属病院における自己血輸血の現状

「目的」 本院ではリスクの少ない自己血輸血(全血貯血)を平成4年より推進に努めてきた. 平成10年9月からは, 成分採血装置(ヘモネティクス製マルチ)を使用し, MAP製剤とFFPに分離し長期間保存, 多量貯血を試みたので, その実施状況を報告する. 「方法」 患者病態と検査結果を把握した上, 各科主治医によりインフォームドコンセント終了後, 自己血貯血実施計画をたて, 総貯血量, 保存方法を決めて, 輸血部に依頼する. 輸血部専任医師は, 自己血採取申し込み書に記載された, 病名, 心疾患の有無, NYHA, 既往歴, 合併症, 感染症, 血液検査等より自己血採取の適応になるか確認をし, 鉄...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 239
Main Authors 野村努, 窪田良次, 馬場夏美, 田港朝彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.2001
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ISSN0546-1448

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Summary:「目的」 本院ではリスクの少ない自己血輸血(全血貯血)を平成4年より推進に努めてきた. 平成10年9月からは, 成分採血装置(ヘモネティクス製マルチ)を使用し, MAP製剤とFFPに分離し長期間保存, 多量貯血を試みたので, その実施状況を報告する. 「方法」 患者病態と検査結果を把握した上, 各科主治医によりインフォームドコンセント終了後, 自己血貯血実施計画をたて, 総貯血量, 保存方法を決めて, 輸血部に依頼する. 輸血部専任医師は, 自己血採取申し込み書に記載された, 病名, 心疾患の有無, NYHA, 既往歴, 合併症, 感染症, 血液検査等より自己血採取の適応になるか確認をし, 鉄剤の投与並びにエリスロポエチンの使用の有無を主治医に指示を行う. 自己血採取実施日は, 患者の血液検査を行い輸血部専任医師から問診を受け, 異常が認められなければ採取実施となる. 採取されたMAP製剤, FFP製剤は鍵付き保冷庫(4℃), フリーザー(-40℃)に保存され, 手術日に手術部より送付された, 自己血製剤引き換え券を確認のうえ手術部へ出庫する. 「結果」 自己血採取件数は, 平成4年104件, 平成5年110件, 平成6年65件, 平成7年53件, 平成8年117件, 平成9年132件, 平成10年190件(成分採血50件含む), 平成11年120件(成分採血65件含む)であった. 自己血は新鮮な血液から優先的に輸血している. たまに凝集塊を認めるものもあるが, 輸血セットまたは凝集塊除去フィルターを介して使用しているが問題は起こっていない. しかし, フィブリンが析出しバック内の輸中口を塞ぎ使用不可になった症例が1件だけあった. 「考察・まとめ」 成分採血装置を用いた自己血採取法は重篤な合併症もなく安全に施行し得た. 患者管理及び事務的手順が複雑なため自己血輸血を控える医師もあるため, 手順並びに手続きを簡素化することを輸血部として考慮したい.
ISSN:0546-1448