活性型プロテインC(APC)は好中球の活性化を抑制することで実験的脊髄損傷後の運動麻痺を著明に軽減する

「目的」APCは凝固制御物質として知られているが, 最近抗サイトカイン作用により好中球の活性化を抑制することが判明した. 今回活性化好中球が重要な関与をしていると考えられている脊髄損傷(SCI)後の運動麻痺に対するAPCの効果について解析し, APCのSCI治療薬剤としての有用性について検討を加えた. 「方法」SCIはラットの第12胸椎高位の脊髄を圧迫し作成, 運動機能評価はinclined plane法にて判定, 好中球集積の指標としてミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を, サイトカイン産生の指標としてTNF産生を測定した. 「結果」損傷21日後の運動機能はSCI群で45.7(度)であった...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 35; no. 11; p. 782
Main Authors 田岡祐二, 成尾政囲, 小柳英一, 浦門操, 野上俊光, 平野拓志, 岡嶋研二, 村上和憲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.11.1998
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ISSN0034-351X

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Summary:「目的」APCは凝固制御物質として知られているが, 最近抗サイトカイン作用により好中球の活性化を抑制することが判明した. 今回活性化好中球が重要な関与をしていると考えられている脊髄損傷(SCI)後の運動麻痺に対するAPCの効果について解析し, APCのSCI治療薬剤としての有用性について検討を加えた. 「方法」SCIはラットの第12胸椎高位の脊髄を圧迫し作成, 運動機能評価はinclined plane法にて判定, 好中球集積の指標としてミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を, サイトカイン産生の指標としてTNF産生を測定した. 「結果」損傷21日後の運動機能はSCI群で45.7(度)であったが, APC投与により50.3と著明に改善した. SCI部位のMPO活性, TNF産生は損傷後著明に上昇しそのピークはそれぞれ3時間後, 4時間後に認められた. これらの上昇はAPC投与により有意に抑制されたが, 他の凝固制御薬剤ではこの抑制効果は認められなかった. 白血球減少ラットでもAPC投与と同様の治療効果が得られた. 「考察」今回の実験結果より, APCは凝固抑制ではなくサイトカイン産生抑制作用によりSCI部の活性化好中球の集積およびその機能を抑制し運動麻痺を軽減していると考えられる. これらの実験事実はAPCがSCIの新しい治療薬剤として有用である可能性を示す.
ISSN:0034-351X