我が子が自閉症であることを願い, 面接を中断した両親の事例
言語発達遅滞を主訴に言語臨床家(以下ST)の元をたずねてくる家族は, 子どもの問題を軽減したいと望んで来談する, と通常STは考える. しかし必ずしも常にそれが真ではない, という経験をした. 本事例が中断となった理由について考察したい. 【事例】2歳6ヵ月の男児. 在胎週数27週, 出生体重790gの低出生体重児. 主訴は言葉の遅れであった. 自発語が数語観察され, やりとり関係も成立した. 【経過】中断までに計6回の面接を行った. 演者は本児と自由に遊んだり, 教具に誘導したりしながら行動を観察し, 父親と話をした. この間, 動作や音声の模倣が観察され, 演者と積み木積みや, ままごと遊...
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Published in | コミュニケーション障害学 Vol. 20; no. 3; p. 162 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本コミュニケーション障害学会
30.12.2003
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ISSN | 1347-8451 |
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Summary: | 言語発達遅滞を主訴に言語臨床家(以下ST)の元をたずねてくる家族は, 子どもの問題を軽減したいと望んで来談する, と通常STは考える. しかし必ずしも常にそれが真ではない, という経験をした. 本事例が中断となった理由について考察したい. 【事例】2歳6ヵ月の男児. 在胎週数27週, 出生体重790gの低出生体重児. 主訴は言葉の遅れであった. 自発語が数語観察され, やりとり関係も成立した. 【経過】中断までに計6回の面接を行った. 演者は本児と自由に遊んだり, 教具に誘導したりしながら行動を観察し, 父親と話をした. この間, 動作や音声の模倣が観察され, 演者と積み木積みや, ままごと遊びをすることができた. 父親は本児が「自閉症ではないか」と訴えたが, 演者は臨床的な観察から, これに否定的な応答をした. しかし, 父親は次のように述べた. 「本児の兄が自閉症で, 母親が本児を妊娠中に交通事故にあって死亡した. 母親は生まれてくる子のことより, 兄が助かってほしいと願い, 本児をかわいいと思えなかったようだ. この子が兄の生まれかわりのような気がし, 自閉症でも良いと思うことがある. 」その後, 本児は神経内科を受診し, 「自閉症」と診断された. |
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ISSN: | 1347-8451 |