ガンマグロブリン製剤大量投与中に製剤中の抗赤血球抗体により輸血検査の異常を示したITPの一症例
【目的】ITPに対する脾臓摘出手術のため当院入院となり, 輸血検査を行なったところ交差適合試験で異常を示し, 術前に投与されていたγ-グロブリン製剤中の抗A抗体による副作用と考えられた一症例を報告する. 【症例】患者は45才女性. ITPの疑いで当院に紹介され, 脾摘適応となり(血小板数:7000/μl), 手術目的にて入院となった. 入院前よりステロイド剤を経口投与されており, 術前5日間にγ-グロブリン製剤20g/dayの投与を受けていた. 【成績】手術3日前の患者検体はA型, Rh(D)陽性, 不規則性抗体スクリーニング陰性であったが自己血球に弱い凝集が認められた. 手術前日に同じ検体(...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 313 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.03.1991
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 【目的】ITPに対する脾臓摘出手術のため当院入院となり, 輸血検査を行なったところ交差適合試験で異常を示し, 術前に投与されていたγ-グロブリン製剤中の抗A抗体による副作用と考えられた一症例を報告する. 【症例】患者は45才女性. ITPの疑いで当院に紹介され, 脾摘適応となり(血小板数:7000/μl), 手術目的にて入院となった. 入院前よりステロイド剤を経口投与されており, 術前5日間にγ-グロブリン製剤20g/dayの投与を受けていた. 【成績】手術3日前の患者検体はA型, Rh(D)陽性, 不規則性抗体スクリーニング陰性であったが自己血球に弱い凝集が認められた. 手術前日に同じ検体(4℃保存)にて交差適合試験を行なったところ, 自己血球を含むすべてのA型血球に凝集が認められた. 再度, 同検体の不規則性抗体スクリーニングを行なったところ, すべてのパネル血球に凝集を認め, 直接クームス試験も陽性であった. 手術前日の検体では不規則性抗体スクリーニング陰性, 交差適合試験ではA型血球すべてに弱い凝集を認めた. ABO式血液型のウラ試験においてもクームス法でA_1 血球に凝集が認められた. また患者に投与されたγ-グロブリン製剤中の抗A抗体, 抗B抗体の力価は食塩水法でそれぞれ16倍, クームス法で1024倍, 256倍であった. 【結論】患者に投与されたγ-グロブリン製剤中の抗赤血球抗体によりABO式血液型のオモテ, ウラの不一致や溶血性副作用をおこす症例が報告されているが, 本症例のように交差適合試験ですべて不適合となった場合, 輸血の適合血を得ることが困難になる. ITP治療のように大量のγ-グロブリン製剤を投与される場合には, ABO式血液型の同型製剤の製造や, 抗体価の基準の設定が必要であると思われる. |
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ISSN: | 0546-1448 |