高血糖, 高浸透圧の脳機能におよぼす影響

高浸透圧血漿の脳機能におよぼす影響およびその蘇生法確立のために, ぶどう糖負荷により高浸透圧血漿をつくり, アデノシン大槽内投与, GSH静脈内投与により脳波上の変化を追跡した. 麻酔下での状態の検討のために, エーテル, ケタミン, ペントバルビタール使用時のものも検討した. コントロール群ではすべてspike and wave complexの出現後, 脳波は平坦化し, 蘇生できたものはない. しかし, 5例中4例までは心筋梗塞または心室性不整脈が先行しており, 1例のみがθ~δstageを経て平坦化している. GSH処置群では心, 脳障害ともにコントロール群より発症が遅かったが, やはり...

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Published in蘇生 Vol. 2; p. 75
Main Authors 則岡美保子, 天方義邦, 沢井敏安, 松下嘉明, 石橋俊元
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.05.1984
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ISSN0288-4348

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Summary:高浸透圧血漿の脳機能におよぼす影響およびその蘇生法確立のために, ぶどう糖負荷により高浸透圧血漿をつくり, アデノシン大槽内投与, GSH静脈内投与により脳波上の変化を追跡した. 麻酔下での状態の検討のために, エーテル, ケタミン, ペントバルビタール使用時のものも検討した. コントロール群ではすべてspike and wave complexの出現後, 脳波は平坦化し, 蘇生できたものはない. しかし, 5例中4例までは心筋梗塞または心室性不整脈が先行しており, 1例のみがθ~δstageを経て平坦化している. GSH処置群では心, 脳障害ともにコントロール群より発症が遅かったが, やはりspike and wave complex出現後, 平坦化EEGへ移行, 蘇生できなかった. アデノシン投与群は心障害は最も早期に出現する. EEG平坦化に至る浸透圧は平均477mOsm/リットルと, コントロール, GSH群のそれぞれ460, 521mOsm/リットルに比し特に優位に立っているわけではないが, spike and wave complexを発症しなかったものが5例に1例あったことと, 2例の蘇生に成功した点が異なっている. 麻酔中の高浸透圧血漿の影響について, エーテル使用時はコントロール群とほとんど変わらないが, ケタミン使用時は平均402mOsm/リットルと早期にspike and wave complexにひきつづき平坦化脳波をみた. ペントバルビタールではspike and waveの発症をみず, θ~δstageを経て平坦化したが, 浸透圧は平均563mOsm/リットルと有意の差を示した. 死因は心機能障害に伴う脳循環障害であった. アデノシンが脳虚血時に反応的脳血管拡張に関与するということと, 血液脳関門を通過しがたい点を考慮して, 大槽内投与は1時的に脳機能の維持に役立っと思われる. また, GSHは末梢循環不全によるエネルギー不足, 強いアシドーシスを緩和することにより, 脳機能のみならず, 心機能をかなり長く維持するのに役立っていると思われる.
ISSN:0288-4348