Happy-Puppet syndromeの1症例の歯科的所見

Happy-Puppet syndromeは, 重度な精神発達遅滞, 名称にもなっている「あやつり人形様」の特有な歩行動作, いつもニコニコしていて, 突如笑い出す等の臨床所見と, 特徴的な脳波の異常をもつ, 原因不明のsyndromeである. 今回われわれが接する機会を得た患児は, 歴齢4歳11ヵ月の女児である. 家族歴・出生前後の環境については特記すべき事項はない. 生後3ヵ月時, 後ろにそる姿勢, 10ヵ月時, 膝をつっぱるような状態がしばしば認められた. 2歳1ヵ月時, 全身強直性の大発作, 4歳10ヵ月時, 意識消失性の発作が生じ, 脳波の異常, 他の臨床所見と合わせて, 4歳11ヵ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 6; no. 1; p. 81
Main Authors 笠原正江, 鈴木康生, 佐々竜二, 岩崎裕治, 鈴木康元
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 01.03.1986
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:Happy-Puppet syndromeは, 重度な精神発達遅滞, 名称にもなっている「あやつり人形様」の特有な歩行動作, いつもニコニコしていて, 突如笑い出す等の臨床所見と, 特徴的な脳波の異常をもつ, 原因不明のsyndromeである. 今回われわれが接する機会を得た患児は, 歴齢4歳11ヵ月の女児である. 家族歴・出生前後の環境については特記すべき事項はない. 生後3ヵ月時, 後ろにそる姿勢, 10ヵ月時, 膝をつっぱるような状態がしばしば認められた. 2歳1ヵ月時, 全身強直性の大発作, 4歳10ヵ月時, 意識消失性の発作が生じ, 脳波の異常, 他の臨床所見と合わせて, 4歳11ヵ月時, Happy-Puppet syndromeと診断されている. 歯科を受診したのは, 昭和60年10月1日で, 主訴は咬合の異常であった. 患児の口腔内は, HellmanのDental age II A 期の有隙型の歯列弓である. 咬合関係は, 前歯部反対咬合, 臼歯部terminal planeは下顎が近心位をとるmesial step typeであり, 正中関係は正常であった. また, 上下顎ともに歯肉・口蓋・小帯等の軟組織の異常, ウ蝕, 歯肉炎の発生, 個々の歯の異常は認められなかった. 歯列弓, 個々の歯の測定値については, 上顎歯列弓長, 上顎乳側切歯, 上顎乳犬歯が小さい傾向にあり, 上顎第一乳臼歯, 下顎乳側切歯は大きい傾向にあったが, 他は標準値であった. セファロ分析の結果からは, Facial angle, SNP, SNB, Cd-Goが標準値であるのに対して, Convexity, A-B plane angleが大きく, SNA, A'-ptm', ANS-Meが小さいことから, おもに上顎の劣成長が疑われた. さらに, 頭蓋長, 頭蓋高, 頭蓋幅の測定値が標準より小さいため, 短頭蓋・小頭蓋であることがわかった. 以上, Happy-Puppet syndromeの歯科的所見をまとめると, 頭蓋ならびに中顔面部の発育の遅れおよび発育の不調和による咬合の異常が特徴的であり, 個々の歯の異常, 歯の発育については, 現在までのところ問題はなかった.
ISSN:0285-922X