視床・被殼出血の患者における移動能力を推定する予測式の実用性とその役割
【目的】脳卒中発症時の状態と治療による獲得機能を明らかにすることは, 患者, 家族とのInformed consentの一助になると考え, 入院時臨床データから統計的手法を用いての移動能力予測を行ってきた. 【対象と方法】対象は, 1983年1月から1988年12月までに発症後24時間以内に当院に入院した高血圧性脳内出血のうち視床出血78名, 被殼出血126名である. 1986年6月までの視床出血44例, 被殼出血66例をInternal dataとし, これ以後の視床出血34例, 被殼出血60例をExternal dataとした. 解析手法として多変量解析・数量化I類を用いた. 発症後6カ月...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 28; no. 11; pp. 825 - 826 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
01.11.1991
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ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 【目的】脳卒中発症時の状態と治療による獲得機能を明らかにすることは, 患者, 家族とのInformed consentの一助になると考え, 入院時臨床データから統計的手法を用いての移動能力予測を行ってきた. 【対象と方法】対象は, 1983年1月から1988年12月までに発症後24時間以内に当院に入院した高血圧性脳内出血のうち視床出血78名, 被殼出血126名である. 1986年6月までの視床出血44例, 被殼出血66例をInternal dataとし, これ以後の視床出血34例, 被殼出血60例をExternal dataとした. 解析手法として多変量解析・数量化I類を用いた. 発症後6カ月時の移動能力を目的変数とし, 説明変数は, 年齢, 病巣の左右, 意識レベル, 麻痺の程度, の項目と各疾患特有のCT分類と血腫量, ならびに被殼出血では治療法の項目を加えた. Internal dataを解析して得た予測式(既発表)にExternal dataを代入し, 予測式の実用性についての追試を行った. 【結果】視床出血Internal dataから得た予測式にExternal data 34例を代入したところ31例(91.2%)が5段階評価の1ランク以内の誤差であった. 被殼出血では60例中57例(95%)が1ランク以内の誤差でおさまった. 【結論】急性期に得られる臨床データから6カ月後の移動能力についての良好な予測が可能で, 予測式の実用性が示された. 当院ではこの予測値Fundamental (F)-Indexに基づいて患者, 家族の指導を行い, 早期の支援の確立を図っている. <質疑応答> 安部博史(福岡大):頭部CT撮影時期はいつですか. 葺石安利:入院後24時間以内に撮影したCTを用いている. 出血が増大している場合はその時点から再度判定しました. 塚本芳久(川崎医大):CT分類はもっと簡略化できませんか. 葺石安利:CTでは血腫量と視床・被殼出血の部位診断で, 神経核や内包破壊の程度まで判断するのは難しく, 今回の解析で用いた分類がbetterと考えました. 前島伸一郎(藤田保健衛生大):(1)視床出血例の説明変数には, therapy(stereotactic evacuation等)が含まれていないが, 手術例はなかったのか. (2)初期情報の項目に入れるのは困難かもしれないが, 訓練の有無は, 予後推定に必要な項目ではないでしょうか. 葺石安利:視床・被殼出血の軽症から重症まですべての患者を対象としており, リハを要しないものも含まれています. 視床出血ではaspiration surgeryは行っていません. 脳室ドレナージを必要なものに行っているのみです. 近藤和泉(弘前大):予測値で, 中途半端な, ちょうど各グレード間のまん中くらいの数値が出た場合は, 患者さんにどう説明するのでしょうか. 葺石安利:目的変数である移動能力評価は順序尺度であり比例尺度と違うので, 2.8点と予測値が計算されてもそれを四捨五入することは問題があり, 少なくとも3点(介助)以上となると判定しています. |
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ISSN: | 0034-351X |